【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ33)

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そんなの絶対にだめに決まってる。

「ユーリ！」

その瞬間、一番聞きたかった声が聞こえてユーリはとっさに顔を上げた。ルシファーはヒュゥと口笛を鳴らし、目を細める。
　銀色の髪を揺らして、屋根から着地したその人物はすぐにユーリに駆け寄った。ユーリはじんと視界が滲むのが分かり、必死に目元をこすって抱きついた。

「……ルチル！」
「怪我はないみたいだな。よかった」
「ちょぉっと、銀龍くぅん？作戦、台無しなんだけどぉ」
「悪い」

ユーリの頭を撫でるルチルはそういって視線を落とした。ルシファーはそれに唇を尖らせて「やっぱ、愛のためならってやつぅ？」と首をかしげた。
　その温もりはやけに久々に感じて、ユーリはルチルの胸に顔をうずめて、これでもかと思うほど抱きついていた。

「……で？どうするつもり？」
「それが……」
「まさか、ないっていうの？しんっじらんなぁい」
「……敵に先手を打たれた」

それにルシファーは目を丸めた。そして目を細めて、はーんと鼻を鳴らす。

「なるほどねぇ、随分とたちが悪い先手だねっ！」

そう言うとルシファーは振り向き様に剣をひとつとりだすと、縦に思いっきり振った。すると、金属同士が激しくぶつかる音が辺りに響き、ユーリはルシファーの方を向く。するといつの間にか敵兵が剣を片手にルシファーと衝突していた。
　しかし、彼は「隙ありっ」と愛嬌のある声で相手の腹に勢いよく蹴りを回した。

「なるほどねえ、火つけたのがやけにひっかかってたんだけど気配を隠すためかな？火の音で物音は最低限に抑えれば聞こえない。おまけに煙で君たちの優れた鼻も使えないってことか。おまけに街は死角が多いしねぇ」
「ああ」
「どうしようかなぁ……こりゃあ、骨がさすがに折れるなあ」

ルシファーはそういって後ずさった。ユーリはかすかに身を縮こまらせて辺りを見回した。街角に何か動いた気がする。

「十……二十……ふふ、五十は確実にいるね。まいったなあ、僕人間の女の子守れるほど器用に戦える自信ないよ」
「ふざけんな。どうにかしろ」
「分かってるよ。そうしないとノアール君にも龍王にも怒られる。それどころか君には首取られそうだしねえ。まあ最悪死角を潰す」
「……それも、なるべくやめてほしいな」
「注文多いねえ。そんなら、野垂れ死にでもするかい？」
「勘弁だな」

そういってルチルは足のポケットから小ぶりのナイフを取り出した。