【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ4)

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その言葉に小さくユーリの体が強張った。そして潤んだターコイズがじっとルチルを見上げる。彼女は横に首を振って、そんなことないと声を荒げた。
　普段、ぽやぽやした穏やかな彼女とは遠く離れたその声量にわずかにルチルは目を丸めた。

「ルチルは、ルチルは、化ケ物じゃない！優しいもん、優しくてたまにいじわるだけど、こうやって私のことなぐさめてくれる。今日だって、助けてくれた」
「……」
「ルチルは、化ケ物な、んかじゃない」

再び彼女の瞳から花弁が溢れ始め、ルチルは目を見開いた。そして戸惑いながらユーリを見つめる。今のは、自分が泣かせてしまったのだろうか。
　すると彼女はぎゅっとルチルの背中に手を回して、顔を押し付ける。彼女の押し殺した鳴き声が、耳に届いた。それにギュッとルチルは胸が苦しくなる。そっと彼女を抱きしめ返す。ユーリの体は当然、自分よりも小さい。ずっとずっと小さい。小さくて肩幅も狭い。筋肉も全然ないようだ。それなのに、こんな細くて小さな体でどれだけ背負い込んだのだろう。
　この調子なら泣くのも堪えていたように思える。泣くのも我慢して、甘えるのも我慢して、どれだけ我慢したのだろう。

「ユーリ」

ルチルはその想いに胸が裂けるような感覚を覚えながら彼女を見た。ユーリはルチルを赤くはれた目で見つめる。

「俺は……お前をこの先傷つけない自信はない。保障もしない。その涙のこともついさっき初めて知った。お前に関して知らないことなんて山ほどある。
　それでも、お前が許してくれるんだったら、俺はお前……ユーリの傍にいたい」
「……あ、う」

間もなくして彼女は声にならない悲鳴を漏らした。そして、言葉を選ぶように震えた声で話し始める。

「私も、ルチルこと全然、分からない。たまに、ルチルが何考えてるのか分からなくなって、ひどいこと言っちゃうかもしれない。だけど、だけど、ルチルは大好きだよ。
　今日みたいに、ルチルの優しさを無駄にしちゃうこともあるかもしれない。たくさん迷惑もかけるだろうけど、こんな、こんな私で良いならずっと傍にいてください」

彼女なりに必死に言葉を選んだのだろう。それにルチルは目じりが下がるのを覚えた。そして、「ユーリらしい」と思わず笑みを零す。するとユーリも目を丸めて、かすかに肩を揺らした。
　昨日見たばかりだというのに、何故だろうか。彼女の笑顔がひどく懐かしく感じられた。