【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ20)

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現れたのは鎧を背負った騎士だった。十数人……二十人近くはいるだろうか。
　王宮騎士だ。さぁと血の気が引いていくのが分かる。ユーリはすぐに彼らが、ルチルを捕まえにきたのだと理解した。とっさにルチルの背後に周り、彼の服のすそを握る。

「……随分、礼儀のなってねえ挨拶だなあ」
「銀龍……ルチル・デュアメル！確保！」
「聞く気は、ねえか」

ルチルはそう言うとユーリを抱き寄せて、思いっきり飛び上がった。予想外の彼の跳躍にユーリは目を回す。
　彼はじめんに着地すると魔法陣を前方に放った。それと同時に拳銃の発砲音が響き、魔方陣に弾き飛ばされる。目まぐるしく回るその光景にたまらなくなったユーリは目を結び、耳を塞いだ。
　銃の2発目が来る前にすぐさまルチルは裏口の扉を蹴破り、茂みの中に飛び込んだ。すぐに騎士たちの怒号が飛び交うがルチルはややめんどくさそうにユーリを抱えたまま茂みの隙間をぬった。

「ルチル、ど、ど、どうしよう！」
「……」

戸惑うユーリを一瞥し、ルチルは立ち上がると今度は木の上にぶら下がった。それも片腕で。やはり龍の身体能力というのはすごいらしい。
　彼は、すぐに木の枝の上に飛び乗るとひょうひょう枝に飛び移っていく。

「どうするも、こうするも逃げるしかねえだろう」

そう乱暴に答え、ルチルは安定した木の枝の上で動きを止めた。周りの様子を伺っているのか目を左右に動かし口を結んでいる。

　いったいどうなっているのだ。あまりにも唐突な出来事にユーリは思わず目を結んだ。ついにドランさんたちにばれちゃったんだ……うん？ドランさん……ドランさん、あれ？ユーリは首をかしげた。そういえば……さっきドランさんいた？いや、あの中にはいなかったはずだ。けれど彼は騎士団長。それなら、後ろにいたのだろうか。いや、彼の今までの行動を見ていると仲間を犠牲にするような人じゃない。ルチルが危険視されている中、自分の部下に先陣をきらせることはないだろう。
　だったらちがうところにいるの？それなら一体どこに。ユーリはわずかに胸が苦しくなるのを覚えた。自分がルチルに運ばれてるところ見たらドランはどう思うのだろうか。そんな疑問がふと浮かんだのだ。
　けれど、今はそんなことを心配してる場合じゃない。ユーリはルチルにしがみつき必死に息を殺していた。余計なことはしないほうがいいことはいままでの経験でよく分かっていた。