【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ17)

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Ⅳ、護りたい人ページ17

あの夢を見た後、頭がひどく痛んだ。あの金色のひとみが脳裏に焼きついたように離れない。やけに鮮明に、浮かぶそれは忘れることのできない記憶のようだ。そうなると、ふと疑問が浮かぶ。
　もしあれが本当の記憶だったとしたら、何故私の時は止まっていないのだろう。
　時止め(ルーラ)の金色のひとみは人の時間を奪うといわれる。黒から金に変わったあれは恐らく時止め(ルーラ)のもので間違いなかったはずだ。それとも、別の何か……？もし他にいるとするのならなんだというのだ。もしかしてメデューサ？いやいや、それならそれで石になっている。
　店先で唸るユーリは、軽くルチルにほっぺたを叩かれて我に返った。見上げれば心配そうな顔のルチルがユーリを覗き込んでいた。

「……大丈夫か？」
「う、うん」

「やっぱり、まだ体調良くなってないんじゃないか？」と問うルチルにユーリはぶんぶん首を横に振った。そしてぴょこぴょこ跳ねて、元気なことを伝える。それにルチルはならいいんだがと不満そうに声をあげた。
　実は、ユーリがさらわれてからというものルチルにしばらく店を休むように進められた。けれど、ユーリはそれを頑なに嫌がったのだ。家での時間の使い方がまったくもって分からなかったのである。それもそのはず、ユーリはこの店をはじめてからずっと仕事一筋で生きてきた。もちろん、恋愛なんてものもそっちのけで。自分で考えていてもむなしくなってくるが、事実である。

　店先で花の様子を見るルチルを見て、ユーリははたと思った。そうだ、あの夢の人が時止め(ルーラ)なら、ルチルは知っているかもしれない。ユーリはカウンターから身を乗り出し、ルチルに話しかける。

「ねえねえ！ルチル、あの聞きたいことがあるの」
「何？」
「黒髪の時止め(ルーラ)っていないの？」

それにルチルは不思議そうな顔でユーリを見つめた。

「ええと、もっと細かく言うと黒いローブ着てる……」

間もなくして、ルチルの双眼が大きく見開かれた。驚いてるようで、作業をはたと止めたルチル。
　あれ、いけないこと聞いちゃったかなとユーリは少し身構えた。ルチルは……間を置いて呟く。

「……ノアール」
「え？」

それに、ルチルははっとしたのか口元を押さえて、「あ、いや」と口ごもった。それにユーリは目をぱちくちと瞬かせる。