【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ15)

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いともかんたんに頂上まで登りきったロイドは、自分の体重を支えきれると判断した枝にぶら下がると、前後に体を揺らし勢いをつけて飛び上がる。そして屋根に飛び乗った。さっき、目立つとか言っていたのにどうでも良くなったのらしい。
　それにルナはにー！と飛び上がり、どこかへ駆け出していってしまう。ロイドは溜まらずといった様子でため息を零し、ユーリを見下ろすと「追おう」と一言。それにユーリは首を縦に振った。
　ルナは街中の屋根を飛び越えてあっちこちに走り回る。それをすかさずロイドが追う。ユーリはどこにいるかすかさず指示を出した。しかし、早いこと早いこと。

　日が暮れ始め、日没が近くなるころユーリは内心焦り始めた。まずい、家に早めに帰宅しないとルチルの説教が飛ぶ。絶対。しかし、途中まで行ったことを到底投げ出す気にはならず、ユーリはきゅっと下唇を噛み締めてルナの行方を目で追った。もう、こうなったらとことん怒られてやろうではないか。
　そして次の瞬間「あ」と声をあげた。ロイドがルナは端のほうに追い詰めていたのだ。付近に屋根がないので飛び移れなくなったらしい。フシャー！やら、フギャー！やら様々な威嚇をするものの、当然ながらロイドの表情は変わることがない。
　その瞬間だ。ルナは何を決したのか地面に飛んだ。ロイドもさすがに驚いたのか目を見張り、ユーリは小さく悲鳴をあげた。溜まらず目を結びそらすと同時に、ロイドが今度は「あー」とぼやいた。

「……お前ら、何やってるんだよ」
「鬼だ、鬼だ」
「ロイド、てめえ殴られたいか」
「とんでもない」

見知った声が聞こえてユーリが目を開き顔を上げれば、そこには呆れ顔のルチルが立っていた。彼の腕の中にはルナが不機嫌そうな顔で抱かれていた。
　どうやら落下したルナをすかさずルチルがキャッチしたらしい。

「ユーリの帰りが遅いと思って、様子見に来れば……未成年を夜まで付き合わせようとさせるなんて趣味が悪いな、ロイド」
「堪忍」
「ち、違うの……ええと、ちょっと色々あって……ね！ロイドさん」
「そー」

ルチルは眉間に深くしわをよせたが、それ以上言及する気はないらしい。ユーリはほっと肩を撫で下ろした。
　その後、ルナを無事bachhusに返しお礼にとお酒とジュースを1杯ずつカランにおごってもらったユーリとロイドであった。

　外伝、花売り少女と白龍の噺(終)