【オリジナル】花売り少女と時止めさんⅣ【名前変換可能】 (ページ13)

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外伝、花売り少女と白龍の噺ページ13

猫というのは身軽なものである。人では到底たどり着けない屋根の上なんてものにも軽々と上ってしまう。さて、そんな状態にある猫は捕まえるのが非常に大変なのだ。

「ロ、ロイドさん！ど、どうしましょう！？」
「……どうしましょうって言われてどうかできるものじゃない」

　慌てるユーリにロイドは目を細める。それにユーリはあうあうと戸惑った。

「ええと、ぴょーんって！ぴょーんって！飛べないんですか！？」
「飛べないこともないけど、街中でやったら目立つ以外の何物でもないんですけど、それは」
「あ、あ！ルナちゃぁああぁん！まってええええええ」

　さて発端は今から十分ほど前に遡る。ユーリはこの日、街に買出しへと出向いていた。そこで見知った背中を見つけたのだ。透き通った白髪と大きなトランク……ロイドである。ユーリが声をかければ、案の定彼はめんどくさそうな顔をしながら足を止めてくれた。
　ユーリはそれに駆け寄る。

「こんにちは、ロイドさん。買出しですか？」
「……そんなところじゃない？」

相変わらず、やる気がないらしい彼はそんな曖昧な返事を返す。ユーリはそれに苦笑いを浮かべた。

「……まあ、実際は仕事道具の調達」
「仕事ですか」
「……そう、人形師の」

なるほど。ユーリは首を縦に振った。

「普段、俺は自分の作った人形を売ることはしない」
「でも、仕事って」
「今回、特別な依頼が入った」
「特別な以来？」
「……とある名の知れた貴族からの依頼でな。亡くなった娘と同じ姿の人形を作ってほしいって」
「でも普段売らないんですよね」
「まあ。でもたいていそいうのをほしがるやつらは、人形を大切には扱ってくれない。ほとんどが壊れてしまったり、気味悪がれて捨てられる」
「気味悪がれるって……」
「俺の作る人形には魂が篭る。だから人形が生きてるんだ。生きてる人形を雑に扱ってほしくはない。だから、俺が選んだ客しか仕事を受け入れることはない。
　今回の客は実寸台を希望だったから、家にある材料だけじゃ足りなくて、出向いた」

やっぱり個性的なんだなぁと、しみじみ実感する。
　そういえば、以前ルチル聞いた話なのだが、ロイドが操る糸というのは普通の糸とは異なるらしく、魔法で紡がれた糸のようなのだ。そのため、ロイドの意志を尊重しからくりも操り糸もなくうごく人形らしい。