糸桜 ページ8
清玄(きよはる)side
支度を終え、僕と白(きよ)はお花見の舞台、しだれ桜の下へ歩き始めた。
緩やかな上り坂を白と二人で歩く。
本当に良く晴れて、いいお花見日和だ。
こんな日に、白と一緒に歩いている。
一緒に、生きている。
そのことが本当に信じられなくて、本当に幸せで・・・
でも、今ここにある白との時間は、存在はするけれど本物ではなくて。
ただ僕が繋ぎ留めただけのもの。
その証拠に、白には記憶はないし、感情だって知らない、覚えていない。
無表情の人形のよう。
本当は、僕は白の隣になんかいたら駄目なんじゃないか、
こんなに汚れてしまった僕の隣になんて。
それでも愛おしくて、僕の知っていた白を作り上げようとしてしまう。
そんなことを考えていたその時、ふと手の内に温度を感じた。
「白・・・？どうしたの、急に手なんか握って」
「何でもない。なんとなく繋ぎたくなった」
「っ・・・！」
驚いた。温度なんてもっていないはずの白の手に、僅かな温度を感じた。
何だったんだろう。でも、まぁいいか。
そのまま僕らは歩を進めた。
そうして、しばらく歩いたあと、ようやく枝垂れ桜の所についた。
若草色の絨毯に淡い桃色がとても美しい。
それに、どの木も綺麗に花が開いていて、なんだかとても幻想的だった。
白は桜を見た瞬間に僕の手を静かに離し、桜の下へと走っていった。
「きれい・・・こんなところがあったなんて」
「そうだろう。この季節になると絶対にここに来るんだ。僕の秘密の場所」
そういうと白は僕の方に顔だけを向け、尋ねた。
「秘密なのに私はいていいの？」
「白は特別。僕は白に見せたかったんだよ」
「そう・・・ありがとう。兄様」
「さぁ、沢山歩いて疲れただろう。お弁当を食べようか」
僕が食事の支度を始めようと背を向けると、背後からステップを踏む音が聞こえた。
驚いて振り返ると、風が吹き抜け、花弁が舞い落ちていた。
その花弁とともに白も舞い踊っていた。
「白・・・？」
呼びかけても、僕の声など届いていないようだった。
白は儚げに、美しく、舞い続けていた。
その姿は触れてしまえば消えてしまいそうな、僕なんかには届かない、花の精のようで。
僕は大粒の水色の花弁を地面に落とし続けるだけだった。
【糸桜(枝垂れ桜)】
花言葉「優美」
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リン(プロフ) - ねんねこさん» 返信遅くなり、申し訳ございません！！綺麗で儚く美しい文章を綴りたいと思い作った小説であったので伝わってとても嬉しいですヾ(*´∀｀*)ﾉ更新ももっと早くできるよう努力しますね！良ければこれからもよろしくお願いします！！ (2018年11月23日 17時) (
レス) id: 36ae7035f1 (このIDを非表示/違反報告)
ねんねこ(プロフ) - えっすごい面白いというか文が素敵…！花言葉等も凝っていて素晴らしいです！お気に入り追加しちゃいました…続き見たいです！ (2018年11月6日 3時) (レス) id: b2f2509cb0 (このIDを非表示/違反報告)
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