思いの丈 ページ3
街頭の少ない歩道を二人で歩きながら話す。
話題は専らさっきの話。
「ごめんな、迷惑かけて。」
「全然。一緒に帰りたかったし……それに、夏兄のご飯私は大好きって言いたかったから。」
「ありがとう。」微笑んでそう言ってくれたけど、眉間に寄ったシワはとれないままで。
車は無関心そうにすぐ横を通り過ぎる。
しばらくの沈黙の後夏兄は口を開いた。
「俺……さ、やっぱ無理だわ。関係修復すんの。」
「うん。」
「いくらアイツが変わろうとしても、焦凍が友達連れてきたりしても、正直何も響かねぇ。
俺…優しくないからさ、振り上げた拳を降ろせねぇんだ。」
「夏兄……大丈夫？」
「ごめん…姉ちゃんの為に来たのに、逆に悲しませてお前にまで迷惑かけた。」
「私のことはいいよ。…夏にぃ、辛いことからは逃げてもいいんだよ。」
目の前で泣くのを堪える兄を見て、心配しない妹がどこにいると言うんだ。
「私ね…お母さんに会ったの。」
足元を見ていた夏兄は素早く私の顔を見た。
驚愕とよくわからないものが混じり合った顔で私を凝視していた。
「でも、もう会わない。
お母さんは、私のお母さんでいるって言ってくれたけど……
私と一緒にいるときっと、燈矢お兄ちゃんやお父さんのこと思い出しちゃうだろうから。一緒にいない方がいいんだよ。
ほんと馬鹿だよね。
せっかく差し伸べてくれた手を自分から振り払ったの。」
わざとおちゃらけて言った私を、強く咎めた。
「なんで、自分から離れるようなマネすんだよ！お母さんが良いっていうなら…お前は気にすることなんか何もないだろっ！」
「進んでるんだよ、お母さんや俺たちは。
お前も進もうぜ！
頼むから……燈矢兄に縋るのは終わりにしてくれ……」
最後の一言が夏兄の本音だ。
熱くなった兄に焚き付けられて、私もつい思いの丈を叫んでしまった。
「じゃあなんで、なんで私は表玄関を使っちゃダメなのかなぁ…！
お父さんに聞いたら、『お母さんや燈矢のことを思い出す』ってさ。」
息を呑む夏兄
帰る時でさえ、私が裏の勝手口を使うことに良い顔をしなかったのだ。
お父さんの身勝手な理由で、今でも制約を課されている私をどんな風に見ているのだろう。
「…この話はおしまい。焦凍や、姉さんには内緒にしてね。
このことは、閉まっておく。」
しーっと指を口元にあてて悪戯っぽく言う。
夏兄も私の真似をしてそれから笑った。
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くじら(プロフ) - めっちゃ好こです！更新頑張ってください！ (4月5日 8時) (
レス) @page30 id: 85541f6d4c (このIDを非表示/違反報告)
爪楊枝 - 読んでいて、すごく楽しいです！！ (3月29日 8時) (レス) @page30 id: ee4a2d718e (このIDを非表示/違反報告)
餅つき団子(プロフ) - アップルパイさん» ありがとうございます！感情移入して読んでくださりとても嬉しいです！亀更新ですがこれからもよろしくお願いします。 (2月17日 0時) (レス) id: 2a377f2d71 (このIDを非表示/違反報告)
餅つき団子(プロフ) - 名無し47183号さん» ありがとうございます！亀更新で本当に申し訳ありません…！これからも応援していただけると幸いです！ (2月17日 0時) (レス) id: 2a377f2d71 (このIDを非表示/違反報告)
餅つき団子(プロフ) - 錫也さん» ありがとうございます！荼毘くんと逃避行していたら今頃…… ご愛読ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 (2月17日 0時) (レス) id: 2a377f2d71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：餅つき団子 | 作成日時：2023年3月7日 17時
