馬鹿みたい ページ6
うるさいクラクションで目を覚ます。
ふらつく足でやっとの思いで立ち上がり、
遠くにいる父と二人の兄をぼんやりと見ていた。
夏兄は泣いてお父さんに何か叫んでいた。
クラクションで埋まる聴覚。
きっと、夏兄も前に進んでいくんだ。
私だけ足踏みしたままで……
お父さんは…蒼炎が上がった一瞬だけ私の方を見た。
青い視界の中、古傷を思い出したような顔がやけにはっきりしていた。
……帰ろ。
急に全部馬鹿馬鹿しくおもえてくる。
あの人たちに、私のことは見えていない。
アスファルトの破片がついた制服を払って、歩き出す。
「どこ行くんだ。」
グッと手首を掴まれ、引き止められる。
振り返れば、やっぱり兄がいた。
焼けこげた制服の左半分を氷結で冷ましている。
「……制服焼けてるじゃん」
「後で着替える。」
「何むくれてんの。」
「別に。お前も、巻き込まれただろ。危ねぇからここにいろ。」
「大丈夫だよ、敵ももういないし。」
「ここにいろ。」
有無を言わせない声色に、無言で従った。
パトカーの赤いランプが、遠くまで届いている。
私たちは暫く何も言わずに事故の処理を見ていたが、先に口を開いたのは兄さんだった。
「怖かったか？」
「バカ、怖かったに決まってるじゃん。」
今更、ジワジワと涙が溢れてくる。
膝が震えて立っていられない。
肩が、剥き出しになった左腕に包まれる。
「もう大丈夫。俺がいるから。」
頭を撫でられ、耳元でそう囁かれてしまえば、安心するのは簡単だった。
「なんで……なんで焦凍はそんなに、私にかまうの？」
思わず言った。兄は色の違う双眸をトロリと溶かしてさも当たり前のように、幸せそうに言う。
「お前が妹で、好きだから。」
「ガキ焦凍…」
ハンカチで涙を拭う。
惨めに兄に体を預けている私。
すぐ隣にある体温が、ずっと前に忘れてしまったはずの、ずっとずっと2人でいた記憶を嫌でも思い出させた。
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くじら(プロフ) - めっちゃ好こです！更新頑張ってください！ (4月5日 8時) (
レス) @page30 id: 85541f6d4c (このIDを非表示/違反報告)
爪楊枝 - 読んでいて、すごく楽しいです！！ (3月29日 8時) (レス) @page30 id: ee4a2d718e (このIDを非表示/違反報告)
餅つき団子(プロフ) - アップルパイさん» ありがとうございます！感情移入して読んでくださりとても嬉しいです！亀更新ですがこれからもよろしくお願いします。 (2月17日 0時) (レス) id: 2a377f2d71 (このIDを非表示/違反報告)
餅つき団子(プロフ) - 名無し47183号さん» ありがとうございます！亀更新で本当に申し訳ありません…！これからも応援していただけると幸いです！ (2月17日 0時) (レス) id: 2a377f2d71 (このIDを非表示/違反報告)
餅つき団子(プロフ) - 錫也さん» ありがとうございます！荼毘くんと逃避行していたら今頃…… ご愛読ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 (2月17日 0時) (レス) id: 2a377f2d71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：餅つき団子 | 作成日時：2023年3月7日 17時
