天女の涙7 ページ13
Side O
久しぶりに逢った翔はいつもより儚げだった。
戸を開けた瞬間倒れ込み、脚を見ると黒く変色していた。
以前家に来た『和』という天女が言っていた。天女は純真無垢でなければならない。人と天人が結ばれると羽衣から黒く変色し、脚から手、腕、最後は全身が黒くなって消滅すると。
それは唇を合わせるだけでも穢されたとなるらしく、翔もまた変色が始まっていると言った。
そうか。これは俺のせいなのか。
翔を抱き上げ畳に寝かせると、彼は確かに言った。『抱いて欲しい』と。
翔が消えてしまうのが嫌だった。翔が消えるのを見たら、俺はきっと正気で居られなくなる。なのに翔は頑なだった。
「智の愛で死にたい…。智を感じて消えたいのだ……」
堪らなくなり翔の上体を強く抱きしめた。
翔が望むのならば。翔の望みのままに。
畳に倒し、体を優しくなぞる。首筋に唇を這わせ、小さく吸い上げると、赤い花を咲かせた。首からは百合の香りがし、翔の体を包んだ。
猛る楔を打つと、翔の脚が白に戻った。
深く、より深くまで打ち、揺さぶると、翔の体は光に包まれてぼんやり白んだ。
翔が、消える。
「翔…!愛している…!俺は翔を愛している…!」
俺の涙が翔に落ちる。
「さ…と、し……わた、しも……あ、いして………」
翔の目から水晶が落ち、強く光を放って、翔は消えた。
「はっ…、は、う…う"ああああああ!!!」
ーーーーーーー
翔が消えてからひと月経った。どこかで百合の香りがする度に、翔がいるのではないかと思ってしまう。
絵馬の形をした根付に百合を描いていたら、とんとんと戸を叩く音がした。
「はーい」
からりと戸を開ける。濃い百合の香りがした。
「絵師さん、ですよね?百合の根付があるって聞いて」
美しい人だった。丹色の着物がより美しさを助長していた。
肌は雪のように白く、瞳は黒曜石のように輝いていた。
「あなたの、名は……」
「え?私は……」
天女の涙
Fin
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はな(プロフ) - 歩夢さん» いつもコメントありがとうございます。前回は返せずごめんなさい。なで肩さんの夢なので何でもありにしてみました。また足を運んでくださると嬉しいです。 (2014年9月29日 12時) (レス) id: eaa9330744 (このIDを非表示/違反報告)
歩夢(プロフ) - 翔さん可愛すぎますね...これからも頑張って下さい! (2014年9月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 536defc02b (このIDを非表示/違反報告)
歩夢(プロフ) - そういう話ですかそうですか.....面白いっ! (2014年9月18日 7時) (携帯から) (レス) id: 536defc02b (このIDを非表示/違反報告)
智夏(プロフ) - かいてくださり、ありがとうございます!!もう、面白くてやばかったです!!慌てる潤くんかわいかったです。にの、早く気付いて思わず笑ってしまいました笑。これからも、頑張ってください (2014年9月6日 18時) (レス) id: 04c882c90f (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 歩夢さん» 分かりづらくてごめんなさい!プライバシーの関係で、名前は伏せると決めているので…。ご期待に添えていたら嬉しいです。今後ともよろしくお願いします! (2014年9月2日 11時) (レス) id: 66d9ffabb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はな | 作成日時:2014年8月19日 23時