君と青春の全部を。 【花巻貴大】

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Your side


「花巻！一ノ瀬！すまん、これを準備室に持って行ってくれないか？」

先生にそう言われて、２人で並んで歩く。

当たり前のように、重くて大きい方を持つのが、彼らしいなって。
やっぱり、好きだなって。


準備室は、やっぱり少し埃っぽかった。

窓から下を見ると、後夜祭のキャンプファイヤーの準備が進められていた。


……あの時と同じ、夕焼け。


「俺がやるから待とっけよ」
「うん」

彼に、何度助けてもらったんだろう。
棚に、荷物が置かれた。


「夕焼け……綺麗だね」

初めて話した移動教室、５人で走った体育祭、テスト勉強、夏祭り……

充実しすぎてた毎日だった。


「最初さ、Aに会った時、少女漫画みてーだなって思ったんだよね」
「え？」
「めっちゃ可愛い転校生が、席隣になるってさ」

いつもの、大好きな笑顔で言う。

「私は、移動教室で声かけてくれた時、花巻くんがヒーローに見えたよ」

私もそう言って、花巻くんの方を見ると

「へーえ」

少し意地悪な顔で言われる。


２人で笑いあって。
幸せだなって。


「A」

不意に名前を呼ばれて、彼の方を見ると、


「好きだよ」


大好きな笑顔でそう言われた。

何故だろう、焦ったりはしなくて。


「私も、好き」


何だろう、この気持ち。
ふわふわした気持ちの中で、そう答えた。

すると、花巻くんは、一気に真っ赤になって、


「じゃあ、Aの彼氏、名乗ってもいいの？」

「もちろん」


私がそう答えると、また大好きな笑顔に戻って、


「ずっと、Aのこと守るから」
「うん」

「絶対、離さないから」
「うん」


手が触れ合った影が、夕焼けに写る。


これからも、これまでも、




君と青春の全部を。




Fin

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