君と青春の全部を。 【花巻貴大】

１３ ページ13

Your side


「え、その、そう思ってるって……？」
「そのままの意味、恋愛的に、とか」

松川くんがそう言うと、私の中の熱が僅かに動くのが分かった。

「いや、まだ会って３か月だよ？」
「十分じゃないの？」

見るからに恋愛慣れしている松川くんはそう言う。


けれど、私は、

「……恋なんて、したことないから分かんないの」


……


そう言うと、松川くんは言葉を詰まらせた。

それから、優しく微笑んで、
「そっか」
と、ひと言。

「じゃあ、Aちゃんが自分で考えな」

言葉の意味が分からなくて、

「どういう……」

そう尋ねようとしたとき、


「ただいま〜」

及川くんたちが返ってきた。

けれど、

「Aは、野菜ジュースとメロンパンな」
「あ、うん、ありがとう」

目先に居る彼の言葉が頭から離れない。


ピンクがかった髪の毛の、優しい表情の彼をどうも意識してしまう。


……


「はぁ……」

自分の部屋に戻ってきて、部屋にダイブする。

お母さんに、
「顔色悪くない？」
って、聞かれたけれど、
「勉強頑張ったの」
と、言っておいた。


……恋って、何？

……特別好きって、何？


私は、今日何度目か分からない問いかけをした。

考えれば考えるほど、答えは分からなくて、なんだか恥ずかしくなってくる。


私は、本棚に手を伸ばした。


漫画はあまり読まない方だけれど、好きな俳優さんが実写化した作品や、とても気に入った作品は集めている。


『彼だけは、どこにいたってすぐに見つけられる』


『君のひと言ひと言に、胸が締め付けられる』


『私の太陽みたいな存在』


こっちが恥ずかしくなってくるようなセリフ。


でも、まだどうしても、嚙み砕くことができない。


私の入れない、未知の領域。

１４→←１２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す