君と青春の全部を。 【花巻貴大】

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Takahiro side


「え、うそ。もうそんな時期？」
「昨日中間受けた気するわな」

及川、岩泉、松川、俺。
今日は部活がオフってことで、ファミレスに立ち寄った。

俺たちの空気がこんなに重いわけ。

原因は、松川のひと言にあった。


「そーいや、期末が近いな」


及川は騒ぎ出し、岩泉は逃げるようにドリンクバーコーナーへ行った。
俺は、とりあえず絶句した。

「まっつん〜今回もよろしくね……」
及川が松川に頼み込む。

「でも、俺は文系がなぁ」
誰かいねーかなぁ、と、松川がスマホを開く。

「いんだろ、文系」
すると、いつの間にかコーラを手にし、帰ってきていた岩泉が口を開く。

「誰」
俺が、すぐさま顔を上げて聞き返すと、


「A」
と、言った。


……


「マッキー」
「うす」

俺は素早くスマホを手に取り、必死になってメッセージを打つ。

「お願いします……」
１度手を合わせて、メッセージを送った。


「Aちゃんがダメだったらどうする！？」
「……その時はその時で考える」

そんな会話をしていると、
「Aちゃん！？」
通知音。

俺はもう１度手を合わせてから、スマホを再び開いた。


「マッキー……？」


……


「……私なんかでよければ、だって」

俺がAからのメッセージを読み上げると、及川と松川がガッツポーズ。

「理系の松川、文系のA」
「これはもう勝ったな」
「もう勉強しなくてもいいんじゃない？」

教えてもらう相手ができたってだけで、
勉強しなければ何も変わらない。

けれど、この一瞬一瞬を喜べるのは

きっと、高校生だからだろう。

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