簪2 ページ13
「只今戻りました！」
走り込みに出ていた杏寿��とAが帰宅する。
「これ、お土産です！こっちが瑠火様、こっちの小さいのが千寿��のです！」
そう言って花冠を差し出すAの髪には白詰草の花が飾られている。
「これは杏寿��がくれた簪です！」
左耳に手を翳し、満面の笑みで瑠火に告げるAの姿に娘時代の自分の姿を重ねた。
＊＊＊
藤の紋の家に産まれた。幼い頃から愛嬌がないと周囲から言われ、縁談にも恵まれなかった。
あれは、十六歳の時だ。二つ年上の鬼殺隊の隊士様と見合いの話が持ち上がった。
代々炎柱を輩出する名家の嫡男・近い将来、炎柱を継承する程の実力者と知らされ、無礼を働かないようにとの気持ちが先立ち、生涯を共にするような方ではないと正直、気乗りはしなかった。
初めてお会いした日、私を待ちながら庭の池を眺めていた槇寿��さんの凛々しい横顔に一目で心を奪われた。けれど、私の姿を見るなり耳まで真っ赤になり私と目を合わせられない程、照れ屋で…。将来の炎柱となろうお方の想像もしていなかった姿に、私は声をあげて笑ってしまったことを覚えている。
それから何度目かの逢瀬の時、槇寿��さんは怪我をされていた。
「この縁談はなかったことにして欲しい。俺から断ると貴女にあやがついてしまうから、瑠火さんから断って欲しい」
今にも泣き出しそうな顔をしていた。任務で何を見たのだろう？私には計り知れない…。でも、私の決心は固まった。
「お断りはしません」
「…。俺は、明日の命も分からぬような身です。貴女を幸せにできるか自信がありません。」
「承知しております」
「もし夫婦となり、子を授かったとしても男子であれば鬼狩りとなり貴女より先に死ぬかもしれない。女子であれば『男子を産め』と周囲からの圧力を感じさせてしまうかもしれない。本当は御両親も大切なお嬢様を鬼狩りに嫁がせたくはないでしょう。俺は、瑠火にさんには幸せになってもらいたい」
「…槇寿��さん、私が貴女との縁談をお断りしたら他の女性が貴方の妻になるのでしょうか？私はそれは嫌です」
「…」
「槇寿��さんは、いつも私の心配ばかりですね。私に鬼は狩れませんが、自分の事を後回しにしてしまう貴方を隣で支えてはいけませんか？」
「…瑠火さん…」
数ヶ月後、瑠火は簪を送られた。その日の槇寿��も、出会った日と同じように耳まで真っ赤になっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 152人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
猫巻(プロフ) - 桃平さん» 今回は冨岡さんを多めに登場させる予定です😀冨岡さん、あんまりお喋りが得意じゃないから「難しいなあ」って、思うんですが、カッコいいのにどこか天然で可愛い人ですよね😃💕 (2021年10月16日 0時) (
レス) id: 1125bff897 (このIDを非表示/違反報告)
桃平(プロフ) - 冨岡さん登場😳✨夢主ちゃんも隊士になり、これから煉獄さんとどんな展開になっていくのか楽しみです✨✨ (2021年10月15日 14時) (レス) @page50 id: 338e350c4a (このIDを非表示/違反報告)
猫巻(プロフ) - 衣世さん» 衣世様、もう信じられないくらいカッコいいですよね！制作側に煉獄さんガチがいるとしか思えませんね💕 (2021年9月26日 14時) (レス) id: 1125bff897 (このIDを非表示/違反報告)
衣世(プロフ) - 羽織わさっ！わかります！ぎゃあぁぁぁ(*/∀＼*)ニヤニヤが止まらないですよねっ！！ (2021年9月26日 10時) (レス) id: 1ea4fe96cf (このIDを非表示/違反報告)
猫巻(プロフ) - 桃平さん» 桃平さん、おはようございます😃ホント、楽しみですね！おこがましいですが、こっちの煉獄さんも公式様に負けないくらいカッコよくできるよう頑張ります🙋 (2021年9月26日 9時) (レス) id: 1125bff897 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：猫巻 | 作成日時：2021年7月7日 2時
