77話 ページ30
「……A、大丈夫?」
「……」
「……」
少し仕事の連絡が入ったから自室に戻ると、父がリビングダイニングから立ち去り。
Aの様子を気にしていたリドルは、父親の目がなくなったことで部屋の隅で膝を抱えているAの前へ、顔色を伺うように膝をついた。
「……薬飲んだ方が良いんじゃないかな。持ってる?ボク、キッチンからカップを持ってくるよ」
「……たすかる」
「少し待っててね」
リドルはそう言って、カップに常温の水を入れAへと差し出し、再度隣へ座る。
ぱきりと薬を押し出して口に入れ水で流し込むAは、リドルから目を逸らしていて。
やはりまだ見られたくないのだろうなと、リドルは苦笑した。
「A、思ってることを言っておくれよ」
「……頭がまとまんねーんだ」
「大丈夫、まとまってなくてもいいから」
「……」
「キミのことをなんだって知りたい」
「……」
「大丈夫だよ。そんなに心配しなくたって、ボクにとってのキミは変わらないから」
「……どう見られてるか心配してるってことも、気付かれたくなかったんだけどなァ」
「見栄っ張りだ」
「見栄っ張りだよ。ずっとそれしかねぇ」
「そんなところもかっこいいと思うよ」
そう言うリドルを腕の隙間から覗き見ると、上機嫌に微笑んでおり。
「キミが怖くて辛くて悲しくって、何回ももうやめたいって、疲れたって、意味ないって思ったのに張り続けた見栄に、みんなが自信を貰ってたところを見てた」
「……」
「それって誇りだよ。矜持だよ。……あっちの家の人は本当に良い人たちだったね。キミが頑張らなきゃって思いすぎちゃうのも、すごくわかる」
「……」
「ねえ、聞いてよ。ボクね、キミはこんなにしっかりしてるのに、なんでボクはこんなにダメなんだろうっていつも思ってたんだ。けどね、けど、ただ、ただ頑張ってただけだったって知って、すごく勇気が貰えたんだよ」
「頑張ってねぇよ……見栄張らねぇと息できねぇだけだ」
「そんなこと関係ないさ。キミのしたことは変わらない。それに……それにね、ボクが何より一番、キミのことを尊敬しているのは……本当に優しいところだよ」
「……やめてくれよ、もういいよ」
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功徳(プロフ) - オパールさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました🥰他の作品でもお待ちしてます🥰 (11月10日 20時) (レス) id: e0d582f997 (このIDを非表示/違反報告)
オパール - 2人ともかっわいい…。溶ける!素晴らしい作品を作ってくれて、本当にありがとうございますっ! (11月10日 20時) (レス) @page47 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - Shiroさん» ウワーありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいすぎる……😚😚😚好き…… (2023年1月14日 23時) (レス) @page17 id: e0d582f997 (このIDを非表示/違反報告)
Shiro(プロフ) - 初めまして、コメント失礼いたします。素晴らしい作品をありがとうございました!!読み進めていくうちに心が抉られ揺さぶられ、感動の連続でした。心情を細やかに書き出すことのできる語彙力・文章力、私も見習いたいです。本当に素敵な作品でした!✨ (2023年1月4日 2時) (レス) @page47 id: 033ac6eba0 (このIDを非表示/違反報告)
自分(プロフ) - チョコドーナツさん» お読みいただきありがとうございましたすぎる……!!!🥰🥰🥰タイトル回収のとこ盛り上がると思ってたのでめちゃ嬉しいです🥰🥰🥰ヤッター‼️ (2022年8月1日 12時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
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