特効薬は君じゃない【ハイキュー！！】影山飛雄

45話 慰めて ページ49

影山side




「俺がAを好きになったのは、初めて一緒にバレーをした時だ。

小学2年生の癖に生意気だったと思うけど、どうしようもなく、綺麗だと思った。
運命だとも思った。




だからこそ、俺は、今もバレーをしている。バレーで悩んだことも、辛かったこともある。

でも、あの光景が瞼に焼き付いて離れないから、バレーの面白さにAが気づかせてくれたから、俺はバレーを続ける。

バレーのお陰で他のことを頑張れたことがある。バレーで学んだことがある。バレーじゃないと味わえないものを知っている。






それは、Aも同じだろ？
Aもバレーが大好きで、きっと俺とAの仲を繋ぎとめていたのは、バレーだったんだよ。バレーがなかったら、恋はしていなかった。






だから、A。
バレーを諦めないで欲しい。」









Aside



私は、黙って飛雄を見つめた。
東京遠征から帰ってきた飛雄は、何故か傷だらけだった。日向君と喧嘩したらしい。


心配する私を他所に、飛雄は玄関で私を抱きしめて、それからぽつりぽつりと話し出した。



飛雄が私を好きになったきっかけと、バレーのことだった。

バレーを諦めないで欲しい、とも言われた。








何故だか無性に、腹が立った。それから、とても悲しくなった。


『バレーを、諦めたんじゃないよ』

飛雄の腕の中で、呟いてみる。

影山「……？」





『バレーを諦めきれないから、飛雄といるのが辛いんだよ』





声が震える。飛雄の腕の力が強くなる。私の目と右足が、熱くなるのを感じた。







『ねえ、飛雄』

涙が溢れてくる。足が使えなくなってから、初めて出た涙だった。









『慰めてよ……』









わかった、という声が聞こえた。
しばらくしてもう一度、わかった、と飛雄が言った。震えた声だった。









それから私達は、昔の話をして、バレーの話をして、キスをして、少しだけ泣いた。


明日は部活が休みで良かったと、飛雄らしくない言葉を聞いて、私は飛雄の腕の中で笑った。







影山「A。ずっと一緒にいるって、約束し直さないか？」

『私、もうバレーができないかもしれないよ？』

影山「関係ねえよ」





小指を絡める。飛雄がふんわりと笑みを浮かべたから、私も笑い返した。



長い夜だった。

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