特効薬は君じゃない【ハイキュー！！】影山飛雄

42話 涙 ページ46

本当に悲しい時に限って、涙が出ない。

きっと足は酷く痛むはずなのに、痛くない。

涙が出るから悲しい。
涙が出るから痛い。
涙が出るから苦しい。

涙が出ないと、自分の感情にすら気づけない。怖い。怖いのがわからないのも、怖い。

『そんな顔しないで』

最近では、私でもわかるほど、私は変わっていた。よく笑うし、口数も増えた。

『飛雄が悲しんでも、足は治らないよ』

やっと、飛雄と釣り合うようになってきたと、思ったのに。
今にも泣きそうな飛雄を見て、私は微笑む。


悲しくないのが、悲しいくらいだ。


自分の感情に、疎くなった。それはもう、6年も前から。

飛雄が、私を抱きしめた。病室のベッドが軋んだ。
私は、飛雄の宝石みたいな涙を見た。





『……終わりにしよう。あの約束』






足を壊したのを知っておきながら、ずっと目を逸らしてきた。
足の骨から嫌な音がしたのを聞いてから思い出したくらいだ。


夢から醒めた気がした。
随分と、心地の良い夢だった。


飛雄が首を振った。私の首元に顔をうずめて、腕に力を込めた。
飛雄は黙ったままだった。


ずっと一緒にいるなんて、無理。
バレーに一生懸命な飛雄を見るのは、もう嫌だ。








影山side


嫌だ。
また、一緒にバレーがしたい。
ずっと一緒に居たい。

A、泣いてくれ。
悲しんでくれ。

もうAの涙を拒む者なんていないんだ。

A。

きっとAが思っているよりも、俺はAが好きだ。
そんな簡単に、約束を破棄するなんてできない。


Aが泣いてくれれば、俺はAを救えるんだ。


涙を見せてくれれば、大丈夫だから、と慰めるし、
弱音を吐いてくれれば、優しく抱きしめる。





だから、俺から離れようとするなよ。




好きなんだ。


誰よりも。







今日、渡そうと思ってたものを右手の中で強く握った。


俺の家の合鍵。







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……切な。
そんなメンタルをズタボロにさせられて、影山君は東京遠征に行けるのか心配になります。※作者

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