特効薬は君じゃない【ハイキュー！！】影山飛雄

37話 いつでも ページ40

蒼真side



いつでも、Aには優しくしようと心がけていた。

ずっとにこにこしていよう。Aが笑わないのなら、せめて僕が笑おうと思ったんだ。


いつでも、Aには優しくしたかったよ。






Aside



蒼真君の部屋をノックする。
ドアはすぐに開いた。


蒼真君の部屋は散らかっていて、画材や資料が散乱し、足の踏み場がない。蒼真君はそれらを足で退かした。


蒼真「ごめん。完成したら片付けるよ」


何か絵を描いているのだろうか。少なくとも、引っ越す気がある人の部屋ではない気がする。


『絵を描いてたの？』

蒼真「うん。……見る？」


私は蒼真君の絵を見たことが無い。私が頷くと、蒼真君はスケッチブックを手渡した。

表紙をめくる。

少女だ。私は、鉛筆で描かれたその少女に、見覚えがある。





首を傾げた。







『………………これ、私？』









何枚めくっても、同じ少女が、同じような目でこちらを見ていた。髪型や服装も同じだ。
多分、小学4年生の頃の私。




蒼真「僕の絵のモデルは、いつも変わらないよ」


スケッチブックを取り上げて、蒼真君は私の隣に座った。


蒼真「僕の絵は、Aをモチーフにしている」


黙っててごめん、と蒼真君は言った。肩がぶつかりそうな距離だ。部屋が狭い。


蒼真「Aは最高のモデルだよ」

『……ぇ』

そういう問題じゃない。





蒼真「…………ごめん。

僕はあの時、Aを絵のモデルとしてしか認識してなかったんだと思う。守れなくてごめん。

……あまりにも綺麗で、描かずには居られなかったんだ」




もう一度「ごめん」という声が聞こえた。


蒼真「ごめんなさい。……………気持ち悪いよね」


蒼真君が自嘲気味に笑う。私は顔を伏せた。蒼真君が泣いているように見えたからだ。


『…………蒼真君は』

蒼真「……？」

『蒼真君は、気持ち悪くないよ』


蒼真君は優しい。
引っ越しの提案の意図も、帰ってきた時抱きしめてくれた時も、笑った顔も。


全部が、優しさで覆われていて、いつも輪郭が掴めない。



『言ってくれてありがとう』


初めて、「本当」の蒼真君を知れた気がした。


『…………兄さん』








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お待たせしました！
次回は影山が出てくると思います。

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