episode56 変わらぬ毎日 ページ10
優真のそんな様子を横目にしながら、私はこの間、弘とここで話したことを思い出した。
「将来何になりたいのかなー」
小さくつぶやく。
「なあ弘」
「なんだよ」
不機嫌そうな声だ。
いや、実際ちょっと苛立っている。
「お前は結局、将来何がしたいんだよ」
弘の横顔は、一瞬いっそう不機嫌に私に向けられ、そしてその直後、この間のことを思い出したようだった。
「……俺だって、わかんねえよ」
恥ずかしそうに、それでも何の迷いもなく弘は云い切った。
少しびっくりだ。
「え、弘って、特にやりたいこともないのに勉強してんの」
べットの上から、驚きの声が上がる。
顔を見てみると、驚きと疑問でいっぱいの春秋の表情。
「別にいいだろ」
「何の目標もなく勉強してるの？」
「今のところは大学だろ」
「え？弘くんもう大学決めたんですか？」
今度は遥が驚きの声を上げる。
ちょうど私も思ったとことだ。
ということは、遥もまだ特には決まっていないということか。
「いや。でもとりあえず今は勉強しとく。来年までに行きたい大学決まった時に、そうすれば不自由ねえだろ。今できることは、今やっておくべきだと思う」
「うーん」
弘の言葉に、春秋が首をかしげる。
「弘かっこいー」
「さすがですね」
優真と遥からは賛歌の声が上がった。
「お前らも関心ばっかしてねえで実行に移せよ！」
「でも俺勉強しなくても真ん中くらいなんだけど」
「優真、それは勉強してトップとってる弘に失礼だよ」
「お前のほうが失礼だわ」
弘が私と優真の頭をたたく。
「今できることねえ……」
春秋はまだ考えてるのか。
相変わらず単純だな。
「ぼくもとりあえず目の前の中間頑張らないと」
「仕方ねえ。私も今回は勉強するか」
「雪降るからやめてくんない？」
「おい」
優真から失礼な言葉が飛んでくる。
私はそれに対して優真を軽くあしらった後、
「まあ、とりあえず勉強は明日からで」
そう云って春秋とお喋りをはじめた。
「あーあ、こいつ今回も勉強しねーな」
そういう弘のつぶやきは、頭の隅にとどめておこう。
episode57 日を浴びて→←episode55 ちいさなできごと
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葉奈(プロフ) - 萌菜さん» いつもいつも本当にありがとうございます!!すっごい嬉しいです！がんばります!!! (2013年11月17日 13時) (
レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
萌菜(プロフ) - 私やっぱり葉奈さんのファンです！１,２と一気に読みましたが、最っ高に面白かったです！！ (2013年11月17日 10時) (レス) id: c538a33189 (このIDを非表示/違反報告)
うちわ(プロフ) - 葉奈さん» おう！ (2013年11月13日 19時) (レス) id: 9546e088aa (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - うちわさん» ありがとー！がんばるね!!これからも読んでやってくれ(( (2013年11月13日 19時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
うちわ(プロフ) - 葉奈さん» そう？私は葉奈を応援してるからね！誰がなんといおうと←更新楽しみに待ってるね！ (2013年11月13日 19時) (レス) id: 9546e088aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葉奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時：2013年9月2日 17時
