僕等２ 【オリジナル】

episode88　　跳ねる ページ44

だってさと続けて、Aは愚痴りはじめる。
この会話、修学旅行の時もしたのに。


「土産なにがいいかって聞いただけで、一生帰ってくんなってなんだよ！ そのあとのメールも無視しやがるし」

「Aしつこいからだよ。もっと男心ってもんを考えないと」

「そうそう！ だからAはいつまでたっても彼氏できないんだよ」

「いや、Aに彼氏できない理由はそれ以前の問題だから。男心以前に、Aの性別が……」

「お前ら今日はべらべらよくしゃべってんな。調子いいじゃねえか。ちなみに私の体調も万全なんだぜ」

ガタンと席から立ち上がって、ポキポキと指を鳴らすA。
こういう時のAは超怖い。


「いやぁー！ お助けー！」

「暴力なんて最低よ、A！」

「言葉だって暴力になんだよこのアホどもが！」


その言葉の直後、おれの頭に、今日一の衝撃が。


「痛ってぇ！」

「だから、そういうところがダメなんだってAはー……」

「うるせえな、余計なお世話なんだよこの野郎」

そして、なぜか俺の頭にまた新しい衝撃。

「痛った！ なんで!? なんで俺今殴られたの!?」

「っせえ」

唾でも吐きかけてきそうな勢いで、Aは元居た席に座りなおした。

可愛いとは程遠いA。美人でも、特別スタイルがいいわけでも、胸がでかいわけでもなく。
どちらかというと、女子からは遠くて、男子に近い性別だと思う。

出逢い方が違っていたら、もしかしたら、好きになっていたかもしれない。


…………いや、ないな。ないや。


「おいこら春秋。なんで今私の顔見てそんな憐れんだ顔してため息はいたんだよ。ぶん殴るぞ」

「なんでもないよ！ もう勘弁！」


ないな。絶対ない。
最近になって、昔から優真がいっていた気持ちが分かった。


ずるがしこくて、バカで、お節介で、男勝りでアニメオタクなA。



「ったく、春秋は……」

「ホント、こいつといるとバカが移りそう」

「なんだと泰未！ こっちこい！」

「って、なんであんたがこっちくんの!? 来ないでよ！」

「春秋！ こら変態！ 泰未に近づくなよ！」


そう云って、Aは泰未を抱きしめる。
嬉しいけど、どう反応していいのかわからない。そんな丸出しの表情であたふたする泰未。

やっぱり小動物みたいだ。

「何？ こっち見ないでよ」

「なんだよその態度は。Aには素直なくせにさ」

「べ、別に良いでしょ」


拗ねたような顔をして、泰未は顔をそむけた。

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