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episode77.8  しゃぼんだまとんだ ページ33

背けた視線の先に茜色が広がる。

どうやらかなりゆっくりと歩いていたらしい。


それを知ってか知らずか、泰未の歩調も口調も変わらず穏やかだ。

「夏祭りの日に、Aに何かしたんでしょ」

「......べつに」

「そう?まあ聞いたりしないけどさ。でも、Aは信じていいと思うんだ。ううん、信じる。昂夜もでしょ」

「俺が?」

「そうだよ。だって昂夜、私以外の女子とあんなに好意的に話すの、はじめてじゃない?」

「そうだったっけ」

「そうだよ」

スキップでも踏みそうな口調で泰未がそう告げる。

「昂夜だって、Aたちと話すの楽しそうだもん」

「べつに先輩と話したって楽しくねえし」

「A“たち”だってば。昂夜、なんだかんだでAのこと意識してるんじゃないの」

「まさか。冗談じゃない。誰があんなうるさいやつ」

「面白いって云ってあげて」


くすくすと笑いながら、泰未は笑顔を絶やさずにそう云った。


――――ないない。あれを意識するとか絶対にない。


あれは女子じゃない。女子になりすました何か、という方が正しい。
あいつと一緒にいる幼馴染もそう云ってた。
「あれは女子じゃない」って、確実に断言してた。


「だから話しやすいのかもね。心を開きやすい」

「......」

「Aは平気だよ。今までの子たちとは違うよ。絶対に、違う」


泰未は俺に云い聞かせるようにそう云った。

こっちが兄貴なのに、まるで向こうが姉みたいな云い草だ。
というものの、どうせ双子なのだから、上下関係はあまり関係ないが。


「昂夜も、そう思うからちゃんと話すんでしょ」


――羨ましいんだろ。私たちみたいな関係が。

――そういう友達が欲しいんだろ。



「おれは......」

友達になりたいのかな。


そう云おうとした声を遮ったのは、泰未の携帯だった。

「あっ、Aからだよ」


......あの野郎、タイミング悪すぎんだろ。


「お土産何がいい?......だって。やっぱり紅芋かなー。ねー、昂夜......」

「知らねえよ。一生帰ってくんなって云っとけ」

「え、ちょ......昂夜!」


突然早足で歩きだす俺を、後ろから駆け足で追いかけてくる音がする。



友達とかありえねえ。


意識とかもっとありえねえ。

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設定タグ:葉奈 , 日常 , 高校生   
作品ジャンル:ギャグ, オリジナル作品
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葉奈(プロフ) - 萌菜さん» いつもいつも本当にありがとうございます!!すっごい嬉しいです!がんばります!!! (2013年11月17日 13時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
萌菜(プロフ) - 私やっぱり葉奈さんのファンです!1,2と一気に読みましたが、最っ高に面白かったです!! (2013年11月17日 10時) (レス) id: c538a33189 (このIDを非表示/違反報告)
うちわ(プロフ) - 葉奈さん» おう! (2013年11月13日 19時) (レス) id: 9546e088aa (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - うちわさん» ありがとー!がんばるね!!これからも読んでやってくれ(( (2013年11月13日 19時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
うちわ(プロフ) - 葉奈さん» そう?私は葉奈を応援してるからね!誰がなんといおうと←更新楽しみに待ってるね! (2013年11月13日 19時) (レス) id: 9546e088aa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/  
作成日時:2013年9月2日 17時

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