episode60 きまぐれメール ページ14
ざわざわと浮き足立つ教室は、6時間目のHL。
修学旅行一か月をとうに切り、残すところあと20日。
クラスでは、班の人たちで行動をどうするかという話し合いが始まっていた。
話し合いと云ったって、もうほとんどピクニック気分だ。
まったく、沖縄は日本で唯一地上戦が行われたところなんだから、もっとまじめにしなよ!
なんて云うやつはいない。
当たり前だろう。誰だって旅行は楽しみたい。
でも、事前学習で見た沖縄の地上戦の映画はすごく印象に残ったりしている。
だれもが生きることだけに必死で、悲しい永遠の別れがあって。
あれを見たら、死んでしまったほうが楽なんだと思った。たぶん生きているほうがつらい。
それでも、みんな生きたいと思うのは、不思議だな、なんて深く考えてみたり、話してみたり。
「A」
不意に後ろから名前を呼ばれる。
反射的に振り返るが、声でなんとなく察しはつく。
「どした」
弘が表面退屈そうな、だけど心の中ではちょっと楽しみにしている、なんて複雑な表情をしながら立っていた。
「お前メール見てねえの」
「メール?」
云われて携帯を開くと、なんと春秋君から2通、着信3件、優真君から意味のないメール6通、たぶんわざと184でかけてきた着信5件。
「きもちわるっ」
「早く見ないからだろ」
うるせーなーと文句を云いながら班の輪を抜けて、多分まともだと信じよう、春秋のメールを開いた。
『自由行動どこ行くー(。´・ω・)?』
顔文字うぜえ。
「自由行動か。……つか、そんなん帰りながら決めりゃいんじゃね?」
「どうせ唐突に思いついたんだろ」
「ですよね」
もう1通のほうを開く。
受信時刻は1分前。
『返信してよー(*´Д`)もうそっち行っちゃうからね(´艸`*)』
顔文字うぜえ。
「……って来んのかよ!」
「もう来たよ!!」
「うほわあっ!?」
「なんだその叫び声」
真横に今日も元気な、昼休みぶりの春秋君がいた。
後ろにはだらだらと制服を着た優真と、ふわふわを振り撒いた遥が立っていた。
うちのクラスの女子の視線は、みんな優真と春秋に注がれる。
うちの学校にいじめなくてよかった、心からよかった。
「ねえ自由行動」
「だから普通に帰り決めりゃいいだろ。なんで今なんだよ」
「俺たち青春時代には、今しかできないことがあるだろう!」
「だろう!じゃねえよ。先生に見つかったら怒られんぞ」
「しらないもんねー」
春秋はそう云って、空いている椅子に腰を下ろした。
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葉奈(プロフ) - 萌菜さん» いつもいつも本当にありがとうございます!!すっごい嬉しいです!がんばります!!! (2013年11月17日 13時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
萌菜(プロフ) - 私やっぱり葉奈さんのファンです!1,2と一気に読みましたが、最っ高に面白かったです!! (2013年11月17日 10時) (レス) id: c538a33189 (このIDを非表示/違反報告)
うちわ(プロフ) - 葉奈さん» おう! (2013年11月13日 19時) (レス) id: 9546e088aa (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - うちわさん» ありがとー!がんばるね!!これからも読んでやってくれ(( (2013年11月13日 19時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
うちわ(プロフ) - 葉奈さん» そう?私は葉奈を応援してるからね!誰がなんといおうと←更新楽しみに待ってるね! (2013年11月13日 19時) (レス) id: 9546e088aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時:2013年9月2日 17時