堵 ページ28
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ノックを聴いてから、入り口まで歩き、ドアをおそるおそる開けるまで
人よりも3倍ほどの時間がかかった。
朝と夕方以外に、仲居が部屋に来るというようなことは聞かされていなかったので、午後3時の突然の訪問を、大野はたいへん不安に思ったのである。
(…誰……？)
できれば無視をしたかったけれど、そういうわけにもいかなかった。
出なければ、夜になるまで、コンコンコンと鳴り続けるような気がした。
そんなことはないし、何かが化けて出るわけでもないのだから、それほど警戒する必要もなかったのだが、予想外の出来事に、大野はほとんど混乱していたのだ。
必要以上にびくびくしながらドアを開けると、
そこに居たのは櫻井であった。ほんのりと鼻を紅くして立っていた。
(びっくりした…)
手には竹ぼうき。枯れた植物と、雨の予感の香りを纏って、そこに居た。
大野と目が合うと、柔らかに微笑む。
控えめに開けたドアから、秋の空気が吹き込んでくる。
窓風とは、また違う感覚だった。頬に当たる秋よりも、身体で浴びる秋の方が、ずいぶんとリアルだった。
【その辺りを掃いてました】
差し出された秀麗な文字を見て、大野は、これをずっと待っていたように思った。
声よりも落ち着いた。大きな音は怖かった。
櫻井は、静かに、音を立てずに会話をしてくれる。
【紅葉です まだ若いですが、ちぎってしまいました 内緒ですよ】
メモと一緒に差し出されたのは、うすく色づいた紅葉。
櫻井は、大野の指先と自分の指先が触れないように注意して、その小さな葉を手渡してくれた。
内緒ですよ、の後のやんちゃな笑顔が、今朝、相葉が見せたそれと似ていた。
大野が何もできずにいると、櫻井は、そっとメモ用紙とボールペンを渡してくる。
渡された白い小さな紙に、大野はすぐにペンを滑らせることはできなかったけれど、一文字ひともじを、お手本をなぞるようにのろのろと書くのを、櫻井は辛抱強く待っていてくれた。
【内緒しかしない 話せないよ どうせだれにも なんにも】
思ったことをそのまま書いたら、櫻井はぷっと吹き出した。
そのままくすくすと耐えるように笑う。着物の袖を口元に当てて笑うので、上品な女芸者のように見えた。
【そういう時もありますよ
お外には出られましたか？風呂屋には？】
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きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん！こちらにも来ていただいて本当に幸せです〜ありがとうございます（泣）ご期待に添えるようなお話が書けたらなと思います！ (2021年1月8日 11時) (
レス) id: d7e5080941 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - はるさん» はるさんはじめまして！お越しいただき誠にありがとうございます。そんなふうに言ってもらえて幸せです♪がんばります！ (2021年1月8日 11時) (レス) id: d7e5080941 (このIDを非表示/違反報告)
律(プロフ) - やっぱりきんにくさんの小説が大好きです！癒しです！続き楽しみにしてます！ (2021年1月6日 19時) (レス) id: 820f2de8f4 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - きんにくさん、初めまして。素敵なお話ありがとうございます。これからも楽しみにしています。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - satominさん» satominさんありがとうございます♪毎度毎度、恐縮でございます。おおお…私が読んでる本は暗くて長くて素敵な本です(笑)その人たちみたいに書けたらなあと思いながらなかなか…な日々です(笑)嬉しいことを聞いてくださってありがとうございました♪ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 3c003d42b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きんにく
| 作成日時：2020年10月19日 16時
