105 ページ5
なんとか重の住むマンションに着く。
オートロックではなかったため、
中にそのまま入った。
重の部屋は3階の302号室。
ドキドキしてきた。
深呼吸してインターフォンを鳴らす。
…出ない。
留守で少しホッとした自分がいた。
まだまだ夜は長い。
重の事を部屋の前で待つことにした。
気づけばもう22時。
まだ帰ってこない重。
そろそろ出ないと電車がなくなってしまう。
ホテルまではここから電車で30分ほどあった。
あと30分がリミット。
少し寒くなってきた。
でも…重に会いたい。
もう少し…もう少し粘ろう。
あと5分…
その時、エレベーターの方から声がした。
男の人の声。
どうしよう。
今さらまた緊張してきた。
重かどうかわからない。
でも足音と話し声はどんどん近づいてくる。
すると、
「ん?お前の家の前に誰かおるで。」
「え?俺ん家?こんな時間に俺に会いにくる人なんて……ゆり?嘘やろ。」
「え?知り合い?俺帰ろか?」
「あ、ごめんなさい、大丈夫です。
私帰るんで。また来ますんで。」
そう言って帰ろうとしたが、
「待って!帰らんで!
ごめん、瞬ちょっと今日帰ってくれるか?ほんまごめん。」
「ええよええよ。
また飲もうな。じゃあな。」
そう言って友達は帰って行った。
「…あの、重、ごめん急に…来て。
しかも友達いたのに…ほんとごめん。」
「いや…ほんまにゆりなん?
なんでここにおるん?ここ大阪やで?」
重はびっくりしたような、
ちょっと怒ったような、絶妙な表情で。
「…重に会いにきた。」
今度は少し悲しそうな目をして、
「なんで…なんでそんなことするん。」
と言った。
「ごめんなさいほんとに。
勝手なことばっかりしてるってわかってるんだけど…
しかも成人式の日もあんな別れ方したし…
でも重とどうしても話したくて。
重…私ね、」
「ちょ、待ってゆり。
ここ寒いしとりあえず入って?」
焦ったように言った重。
「あ、うん、ごめん。お邪魔します。」
重の家に入った。
20人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:華 | 作成日時:2017年10月14日 14時