ファーストキス ページ10
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ふにゅ、と今まで経験したことのない感覚
気がつけば茨の整った顔が目の前にあった。
今までで一番近い。
焦って茨の体を抱き締めていた自分の手を引くが、顔は動かせない。
……これは、もしかして、キス？
｢い、茨！｣
｢なんです？｣
｢ダメじゃないですか、この行為は恋人同士がするって日和お兄様が！｣
｢……はぁ。意味、わかりませんか？｣
きっと両頬を茨に挟まれたままの顔は醜いだろう。
なのになぜ、この人はこんなに優しい顔をしているんだろうか？
施設から零れる光が茨の白い肌を更に白く見せた。
青色の瞳から目が逸らせない。
｢うそだ｣
｢本当です。……ここまで来たなら、男としてケリをつけましょうか。｣
ただでさえ近いのに、先程離れた私の体はグッと引き寄せられ茨の腕の中に収まる。
首元に茨が顔を埋めてくすぐったい。
熱い息が吐かれる。
｢……好きです。A。｣
｢っ！｣
耳元で茨の良い声が響く。
寒いはずなのに、なんだかとても熱い。
好き？茨が、私を？
｢こんな最低野郎に好かれて気の毒ですが、自分は幸せになろうと思っていませんのでご安心を。…ただ、想いは消しきれませんでした。どうかこの御無礼をお許しください。｣
｢…茨は、最低野郎なんかじゃありません。Edenのことを考えて取っている行動だと皆様わかってます。だから、｣
今度は私が。
赤くなって少し悔しそうな茨の顔を上げて、真っ直ぐに青色の瞳を見て言う。
｢その想いは消さないでください。それがなくなっちゃったら私の想いはどうすればいいんです？｣
｢…………は？｣
｢私も茨のこと好きです｣
大きな目が見開かれ、嘘だろ？と言っているみたい
自分から言ってきたくせにこうなることは予想出来なかったのか、初めて見る茨の表情に笑いが抑えきれなかった。
｢あはは！なんで疑ってるんですか？｣
｢いや…想定外の結果です。｣
｢茨の想定を越えられて嬉しいです｣
｢ふは、なんですかそれ｣
小さく笑い、再度茨の唇が重なった。
人生で二度目
それは先程よりも熱と潤いを持ってる
ゆっくり瞼を閉じ、身を任せた。
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作者名：はなちゃ | 作成日時：2022年10月12日 18時
