拾弐章 ページ16
ギュッ...
飛竜「!?な、何だ...!?離せっ...!!離せ...!!」
主様「貴方がつらい思いをしていたなんて、思わなかったのよ...。」
飛竜「同情か。私にしたって時間の無駄だ。さっさと殺せ。」
何故、泣くんだろうか。
私一人死んだって、何も変わりはしないのに。
何故、誰かを思って泣けるのだろうか。
自分の事じゃないのに。
長曽我部様だって、何も悪くないのに殺されたんだ。
人間なんて、欲望の塊だろう?
そんな者といるくらいなら、今死んでしまった方がましだ。
主様「嫌よ。殺さない。」
飛竜「何故?何故なんだ?私は良からぬ事をした。殺されて当然だ。」
主様「嫌よ。」
飛竜「っ...!!何故私を殺さない!!私一人いなくなったって困らないだろう!?」
思わず、口から出てしまった本音。
こいつは、これに反論する事はできるか、できまいか...
・
・
・
主様「自分を大切にしなさい!!!」
飛竜「ﾋﾞｸ)!?」
叫んだ...?
私を叱った...?
自分を大切にしろ...?
飛竜「...何故、そんな事で叫ぶ。」
主様「貴方を思って言ってるのよ!!ここには、誰一人として、必要の無い者はいない!!」
飛竜「だが私は!!」
主様「いい加減にしなさい!!!」
ぱん、と。
乾いた音がした。
頬が痛む。
平手打ちをされた。
主様「死んじゃ駄目よ!!そんな悲しい事言わないで!!」
飛竜「っ...!」
主様「私は貴方が死んでしまうと悲しいわ!!貴方だって、大切な人が死んだら嫌でしょ!?」
大切な、人...
長曽我部様...そうか。
確かに、悲しい。
そして、この人は私が死んでは悲しい...か。
その時、欲しかった言葉をもらえた気がした。
思われるという事は、こんなに嬉しい事、なのだな...
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作者名：蛙傘 | 作成日時：2016年2月21日 11時
