優しさをください。89 ページ24
安「それでは、これで“僕たち”は失礼しますね」
安室さんはそう言って佐竹くんに笑顔を見せて、その場から私を連れ出してくれた。
そのことにホッと安堵した自分に、嫌気がさしてしまう。それなのに、やっぱり安堵は消せなくて。
――けれど、この時の選択肢を、私は完全に間違えていたのだ。
――そう、無理をしてでも、私は安室さんとともに、彼の提案に乗るべきだった。
――そうすれば、
――あんな思いを、
しないで、すんだのに――――――。
* *
――安「はい、これが僕の番号です。何かあったらすぐに僕に連絡を下さいね。駆けつけますから」
安室さんにそう言われて、私はコクリと小さく頷いて、手渡されたスマートフォンを受け取る。本当は持っていても仕方がないんじゃないかなと思っていたけれど、それでも、安室さんが持たせてくれたと言う事実に少しだけ嬉しさが湧き上がったのは秘密だ。
ただの小さな電子機械に、こんなにも愛着がわくとは思わなかった。
何度もロック画面を解除して、アドレス帳を開いて確認してしまう。
そこには間違いなく、安室さんの名前が載っていて、その名前を見るだけで頬が緩む。
『(なんだか、すごく安室さんを近くに感じてる気分)』
ふふっと、意味もなく笑ってしまう。
蘭「Aちゃーん！部活いこー！」
『は、はーい！今行きます！』
蘭ちゃんに呼ばれて、私は慌ててカバンを掴んで蘭ちゃんのそばに駆け寄った。
そして、いつも通りに、蘭ちゃんたち空手部の邪魔にならないように部室を借りてそこで勉強道具を広げる。今日でた課題を黙々とこなしていく。
ほんの少し離れたところでは、空手部の人たちの掛け声が聞こえてくる。そのことにホッとしながら、私は、簡易に組み立てられる机の上に広げていた教科書やノートから視線を外して一度伸びをする。
机の上に置いていた水に伸ばして、ふとそれが軽くなっていることに気づく。
『あれ……？』
ペットボトルの中身はほとんど空になっていて、私は首をかしげる。
『……私、そんなにも水分取ってたかな……？』
普段からあまり水分を取らない私にしては、珍しいこともあるんだなと自分で自分に疑問を持ちながら、私はカバンの中から財布を取り出して立ち上がる。
ひょこりと部室から顔を出して、道場の方へといけば、蘭ちゃんは部員に指示を出しているところだった。邪魔しちゃ悪いなと思い、私は声をかけずにそのままそこを出て、てくてくと自販機のところまで歩いていく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
霞葉 - このお話、とても好きです。続き、楽しみに待っています。 (2020年6月22日 12時) (
レス) id: a64398df50 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - RURUさん» RURU様、お久しぶりです！いつもあたたかなコメントを本当にありがとうございます。大変お待たせしてしまいましたが、ちょこちょこと更新も再開したいと思っておりますので、またおヒマな時に遊びに来てください！ (2019年2月17日 14時) (レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - 白昼夢さん» 白昼夢様、コメントありがとうございます。更新大変遅くて申し訳ありません……。にもかかわらず、作品を大好きと言っていただける優しさにただただ感謝しております。ありがとうございます！これからもよろしくお願いします！ (2019年2月17日 14時) (レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
RURU(プロフ) - うおおおおおおおおおおおおおお！！！更新待ってましたーーー！もう大好きです！いつまでも楽しみにしてます！ (2019年2月14日 12時) (レス) id: b7492cc28b (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢 - ああああああああああああああぁあぁああぁ！！！更新されてるうぅぅうううぅうう！！！って思いました！w頑張ってください！この作品大大大好きです！！ (2019年1月16日 16時) (レス) id: 57897e1d91 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：妃沙 | 作成日時：2018年7月11日 14時
