閑話：said安室−2 ページ9
『ごめんね、お兄ちゃん……ごめん、ね……』
つぶやきの中には、確実に悲しみが含まれていて、なぜか聞いているこちらが胸を締め付けられる。
いまにも泣きそうな声で、ただひたすらに”兄“を求める腕の中の少女を安心させてあげたかったのかもしれない。気づいたら、声をかけていた。
安「……もう、大丈夫だから、もう少し寝ているといい」
『……うん…もう、怖いことは…ない……ありがとう……』
そう言って、再び意識を闇の中に沈めた彼女の頬に、一筋の涙が流れてきたのを見つめながら、自宅の前に立ち、車のキーと一緒につけている自宅の鍵で、扉を開け、中に体を滑らせる。
靴をぬぎ、とりあえず寝室に彼女を連れていってベッドの上に寝かせる。
全身傷だらけだった少女。男に襲われそうになったのを見つけたのは本当に偶然で、それなのに、なぜかとても気になる存在。
安「……とにかく、自分の夕飯でも作るかな」
寝室に寝かせた少女を起こさないように極力静かに部屋を出て、夕飯の準備を始めた。
* *
パッと目がさめると、うっすらと日が昇っているのか、空が少し明るくなっていた。
どうやらソファーの上で眠ってしまっていたらしい。
安「……行動しないと……」
朝の準備をして、動けるようにしておかないとと思った時、自分の体に違和感を感じる。
安「……？」
それがなんなのかしばらくわからなくて、思わず自分の体を見下ろして刹那の間考えた。そして気づく。
自分ではかけた覚えのない掛布が、体にかかっているということに。
それに気づいた瞬間、体を思い切り起こして、かかっている掛布を乱暴に剥ぎ取り、そして急いで寝室を覗き込んだ。
安(まさか、あんな体でここから出て行ったなんてことは……！？)
ないとは言い切れないのが悲しいところだが、寝室を慌てて開ければ、そこにはベッドの上にちょこんと座っている少女の姿が目に映る。そのことに心底ホッとして、安堵の息をついた。
『……？』
不思議そうに振り返った少女を見て、何か言わなければと気持ちが焦った。
安「あ、おはようございます。早いですね」
『……ああ、昨日のお兄さん……？』
安「覚えていていただいて光栄です。体のお加減はどうですか？」
『痛いは痛いですけど、まあ、問題はないです』
淡々と答える彼女に少しの違和感を覚えて、失礼だとは思ったけれど、寝室にずんずんと侵入していく。
彼女の目の前にしゃがみ込んでその顔を覗き込み、驚いた。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
