優しさをください。7 ページ7
隣で考え事をしながら運転する安室さんの横顔を見つめながら、私も考える。
どうしてあそこにいたのか、なんであんなところに赴いたのか。
しかし、いくら考えてもわからない。うん。諦めよう。
安「あなたは、結構淡白なんですね」
『…そうでしょうか？』
安「今少し考えていたようだったのに、わからないと自覚した瞬間に考えることをやめたでしょう？気にならないんですか？」
『気にはなりますけど、わからないことを考えてもしょうがないかなとは思います』
安「……そうですか」
そう言って、安室さんは運伝に集中した。私もそれを邪魔するつもりは毛頭ないので、このまま大人しく助手席に座ったまま、窓の外を流れる景色に意識を持っていき、ただぼうっと見つめていた。
**
気づけば、暖かな腕に包まれていた。かすかに体が揺られている感覚に、私の意識はふっと浮上する。体に回されている腕は、しっかりとしていて、私を取り落すことはないという安心感をくれる。
不思議な感覚だった。
『……おにいちゃん……？』
？「……」
『ごめんね、お兄ちゃん……ごめん、ね……』
まるで揺りかごに揺られているかのような心地の良さに、睡魔が襲ってくる。本当はすがりつきたいのに、それができなくおて、私はもそりと少しだけ体を動かす。あまり動かすと全身が痛みを訴えてくるから、動かすのは首だけ。
そばに感じる鼓動を聞きたくて、猫のようにそばにある体温に頬をすり寄せる。耳にかすかに届く、とくん、とくん、というその鼓動の音に、安心感を覚える。
『お兄ちゃん……あったかい。あったかいね……』
？「……もう、大丈夫だから、もう少し寝ているといい」
『……うん…もう、怖いことは…ない……ありがとう……』
耳に心地のいいその声に、耳に届く優しい鼓動の音に。
私の意識は、沈んでいく。
そう、もう何も心配はないのだ。
お兄ちゃんがそばにいてくれるから。だから、何も心配なんてない。
いつも守ってくれる、大好きな兄。
…あれ、私に、兄なんていたのかな？
でも、だったらどうして私は兄を求めたんだろうか。
優しくて大きな手で、私の頭を、少し乱暴に、でも優しく撫でてくれた。
それだけしか思い出せない。
――「A」
そう。
それが、私の名前。
だったら、伝えなきゃ。
蘭さんに、コナンくんに、安室さんに。
私の名前はAなんだよって……。
――――――伝えなきゃ……。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
