優しさをください。6 ページ6
そのまますたすたと歩いて、安室さん(もうこの呼び方で定着させよう)は階段をリズミカルに降りる。たんたんと体がかすかに上下するのを感じながら、私はどうすればこの人から逃げられるのかを考える。
しかし、どれほど思考を巡らせても何も思い浮かばない。どうしよう。
安「少し痛むかもしれませんが、我慢してくださいね」
『え？んっ！』
安「ああ、すみません、大丈夫ですか？」
『あ、はい。ちょっと痛かっただけなので……』
安「よかった。じゃあ、シートベルト、つけますね」
『……はい？』
え、ちょっと待って、と思った時にはかちっと音がして、私の体はシートベルトで固定される。
えっ！？と驚いている間に、すでにばたん、と車の扉は閉められて、安室さんが運転席に向かって歩いている。やば、このままだと本気でこの人の家に連れて行かれる、と思って慌ててシートベルトを外そうと体を動かすも、私は全身傷だらけで少し動かしただけで身体中が痛みを訴えてくる。
けれどそれを気にしていては行動ができないと思い直し、必至に体を動かしてシートベルトを外そうとしていると。
安「シートベルト、外すと危ないですよ？」
『！！』
気づけば安室さんはすでに運転席に座り、私がシートベルトにかけているその手を覆うように安室さん自身の手を置いている。
有無を言わさぬその笑顔に、私はただ黙して彼のいうことを聞くしかできなかったのは、いうまでもないと思う。
* *
隣でハンドルを握って運転している安室さんを横目で少し見つめて、流れる景色に視線を移す。
そんなことを何度も繰り返している。私は何をしているのだろう。
そういえば、私はどうして“助けて”と思ったのだろうか。全身傷だらけだし。私自身に何があったのか全くわからないし。
というよりも、私は今学生なんだろうか、それとも、社会人として働いているのだろうか。
それがわからないと、何もできない。それよりも先に、名前を思い出さないと。
安「お名前、思い出せませんか？」
『え、』
安「コナンくんが言ってましたよね。記憶、ないんでしょう？」
『あ、ああ…そうですね。ありませんね。なのでなんであそこにいたのかもわからないです』
安「どなたかと約束していたのでは？でなければ、あんなところにふらふらと入ってくとは思えませんが…」
『そうなんですかね…。まあ、それもわからないので、相手の方には申し訳ないですけどね』
自嘲気味にそういうと、安室さんはふむ、と少し考えていた。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
