優しさをください。36 ページ48
なぜ、と言われてもわからないという風にしか私には答えられない。体が勝手に動いたのだ。だから、明確な理由なんて存在しない。
それを、途切れ途切れに伝えれば、安室さんの表情が険しくなっていく。見たことのない、表情。
私は、それに驚いた。
安「体が勝手に動いた？そんなこと、本当に信じられると思っているんですか。あなたは、明確な何かを持って、僕の目の前に飛びだしてきましたよね。僕は、その理由を知りたいんです」
それがわかるのなら私もきっと苦労しないだろう。けれど、わからない。だからこそ、それを訴えているのだ。
『ほん、とうに、わからないです』
安「Aさん、理由を言ってください」
この会話を、もう何度したのだろう。
私には本当にわからないのに、安室さんはそれを受け入れてくれない。それが、なぜかとても苦しく感じる。
『私、ここ、を、出ます』
安「え？」
『ここに、ずっといても、迷惑、ですし。それに、……』
安「ちょ、ちょっと待ってください！なぜ突然そんな話になるんですか」
『突然、では、ないと、思います、けど』
安「……どうして」
『理由は、言いました』
安「では、どこにいくつもりですか。記憶がないあなたは、自宅へ帰ることもできない」
『そこらへん、うろついていれば、きっと、見つけてくれますよ？』
最初、安室さんは私な言葉が理解できなくて、首を傾げていた。しかし、その意味を理解した瞬間に、目を見開き、ついで怒りをあらわにした。
安「自分が、何を言っているのか。わかっているんですか」
『もちろん』
安「なぜ、そこまでして、自己犠牲をしようとするのですか。なぜ、周りに迷惑がかかると思い込むんですか。誰もそんなことは言っていない。蘭さんだって、コナンくんだって、梓さんだって、もちろん、僕だって！」
『…………』
安「どうして、そんなにも周りを気にしすぎているんですか。なぜそう思い込むんですか。それがわからない。……あなたは、何を抱えているのですか……っ」
それがわかるのなら、私だって苦労しない。
記憶のない私に、それを訴えてきても無駄だと、安室さんもわかっているはずなのに。どうしてそんなことを言うのだろうか。
思わず、自嘲してしまう。それに気づいた安室さんは、やっぱり険しい表情のまま私を見つめる。
『……その、理由。私も、知りたい……』
安「……っ！？」
『私も……、知りたいです』
まるで、懇願するような声が出てきた。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
