優しさをください。35 ページ47
安室さんはグラスを手に持って私のそばに近づいてきてくれる。その様子を、ぼうっとしたまま見つめ続ける。
安「Aさん、起き上がれますか？」
『…………』
できないことはないけれど、体が痛いからできるだけやりたくない、というわがままが頭の中をよぎる。しかし、それにハッとして、私は慌てて寝転がったままの状態で首を縦に振った。
頭体を無視して、私は自分の腕で体を支えつつ起き上がろうとする。けれど。
『……っ！？』
かくん、と腕から力が抜けてぼふっ、とベッドに逆戻りする。顔が枕に埋もれて少しだけ息苦しい。
安「Aさん！？大丈夫ですか！？」
安室さんの少しだけあった声を聞きつつ、私はどうしたものかと思う。
なぜだか思ったように力が入らない。なぜだろう。
枕に顔を埋めたまま考えていると、体を優しく起き上がらせる腕があった。驚いて何度も瞬きを繰り返してしまう。
体を完全に起き上がらせてもらったと同時に、自分の視界に金髪が入る。
そこでようやく理解する。安室さんが助け起こしてくれたのだ。
お礼を言いたいのにそれができなくて表情を歪めてしまう。しかし安室さんは私のその表情を気にすることなく、口元にすっとグラスを持ってきてくれた。
思わず、体を少しずらしてしまったけれど、それに気づいた安室さんが素早く私な体を逃さないように背中に腕を回して、固定する。そして再び私の口元にグラスを持ってきた。
今度は逃げることもできないし、意図がわかったため逃げようとすることもなく、私はゆっくりと唇に当たるグラスから水をもらう。
常温の水は、今の私にはとても飲みやすいものだった。
二口、三口とほんの少量を飲み、私はグラスから唇を離すために少しだけ身じろぎをする。それに気づいた安室さんも、無理に飲ませようとはせずにグラスを口元から離してくれた。
安「大丈夫そうですか？」
『……は、い……』
掠れた声だったけれど、口の中が潤ったことにより声が出てきてくれる。それに私自身もホッとした。
安「それは良かった」
『……あの、どうして、私、ここ、に？』
途切れ途切れの言葉を聞きながら、それでも安室さんはきちんと聞いてくれる、
安「あの日のこと、覚えてますか？」
『あの、日……』
そう言われて思い出すのは、多分、ポアロにいた時のことだと思い、私はこくりと頷く。
安「なぜ、あんなことをしたんですか？」
少し、責めるような口調で、安室さんは私にそういった。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
