閑話：side安室―1 ページ44
――この腕から逃げた彼女を、ただ呆然と見ることしかできなかった――
**
コナンくんと蘭さん、そして梓さんがAさんに必死に声をかけている。しかし、すでに意識を手放した彼女にその声が届くはずもなく、虚しく空を切っているだけだ。
Aさんに危害を加えた男は、今のAさんの状況を見て、すでに茫然自失。一応、コナンくんが警戒してAさんを守るように両手を広げて立っているが、無意味だろう。
男にはすでに覇気がない。
そんな光景を、ただ呆然と見ていた。
安「(……拒絶、された……？)」
その事実が、なぜか自分でも驚くほどの衝撃を受けている。
昨日出会ったばかりの女の子にこんなにも心乱される自分に、困惑する。
自分の手から逃れた彼女が、目の前でゆっくりと倒れていくのを見て、手を伸ばせば届くはずだったのに、それができなかった。
そう、ただ単純に、怖かったから。
またこの手を弾かれてしまったら？
拒絶されてしまったら？
そんなことを考えてしまい、躊躇ってしまったのだ。
安「(僕は、なにをやっているんだ……？)」
たった一人の女の子に、なぜこれほど心を動かされなければならないのだろう。
出会ってからまだたったの一日しか立っていないのだ。僕は彼女のことをなにも知らないし、彼女だって、僕のことをなにも知らない。
この“安室透”という人物像が偽りであるということも、組織に潜入している冷酷な“バーボン”のことも、この国を守ることを第一に考える公安である“降谷零”のことも。
何一つ、僕のことを知らない彼女に、どうしてここまで、心乱されるのだろうか。
蘭「安室さん！！」
安「っ！？」
蘭「安室さん、救急車！呼んでください！早くっ！」
蘭さんの必死な言葉を、聴きながら、僕は無意識に首を左右に振った。
蘭さんが何かを叫ぶ。しかし、僕は視線は、倒れたまま微動だにしないAさんに釘付けになっている。
体が勝手に動き出した。
倒れているAさんの側まで歩き、屈み込む。顔にかかった髪を少しだけ払えば、苦しそうな表情のAさんがいる。
安「…………もう一度、彼女は僕が預かります」
そう言って、周りに有無を言わせず僕はAさんを抱き上げる。蘭さんが何かを言おうと口を開いていたけれど、無意識に出ていたバーボンの雰囲気で口を閉ざす。
それは梓さんも同じだった。
横抱きにしたAさんを連れて外に出る。
コ「――安室さんっ！！」
背後で、コナンくんが叫んだ。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
