優しさをください。33 ページ43
『は、なし……っ』
痺れた口で、必死に言葉を紡いで、私は安室さんに訴えた。けれど、私のその言葉聞いた安室さんは、腕の力をさらに強くした。
『あ、むろ、さ……っ、おね、が、だか……！』
安「だめだ、離さないっ！」
どうして。
なんでだろう。
なんで私はこんなにも、この人から離れたいと思っているんだろう。胸に疼くこの感情を、私は知らない。
知ってはいけない。
それなのに。
安室さんが優しすぎて、離れ難くなってしまいそうになる。そうなる前に、離れなければ。
そう。
そうしなければ、
――お兄ちゃんの、二の舞になってしまうかもしれないのに――
『……っ！？』
ずくん、と頭が痛みを訴えてくる。
苦しくなるほどに息が乱れて、私の体を支えてくれている安室さんも驚いている。
苦しい。それなのに。
『(頭が、いたい……っ！！)』
なにを思い出そうとしているの。
でも、思い出しちゃだめ。それを思い出して、苦しくなるのは、辛くなるのは、自分なんだから。
『やっ、はなし……て……！！』
安「落ち着け！」
『でもっ……私、がっ、……っぁ！？』
安「っ、暴れるな！」
私の体を押さえつけるように、抱きしめている安室さんの腕から逃げようとする。
けれど、それをすればするほど安室さんの腕の力は強くなっていく。
それが、苦しくて仕方がない。
体が痺れる。呂律が回らない。頭がいたい。
だめ。
離して。
『おね、が……い……』
安「っ！？」
懇願するような声が、小さく出てくる。それでも、これほどに密着している安室さんになら聞こえるだろう。だからこそ、この状況に甘えが出たのだ。
そして、一瞬緩んだその腕に、抵抗ができたのだ。
渾身の力を使って、私は安室さんの腕から逃げる。けれど、その後には私の体は床に叩きつけられたかのように倒れる。
ある力全てをそれに使ったのだ。そうなるのは必然のこと。
霞む視界で安室さんを見れば、大きく目を見開いて私を見つめている。
ああ、私はなんて最低なことをしたんだろう。
コ「Aさん！！」
コナンくんの声が聞こえる。私を男から守るためになのか、両手を広げて私の前に立っている。
なぜか、その背中が大きく見えた。
蘭「Aさん、大丈夫ですからね！」
蘭さんがしゃがみこんで私に話しかけてくれる。大丈夫と。何度も何度も、私を安心させるように。
頭がぼうっとする。
なにも考えられない。
――遠くで、私を呼ぶ声が、聞こえた。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
