閑話:side安室−1 ページ17
Aさんの希望通りに、彼女から恐怖がなくなればいいと思いながら腕を濡れたタオルで拭っていく。日に焼けていない白い肌。その玉肌に、痛々しいほどの傷と打撲痕。
何がどうなってこうなったのかを、本気で問い詰めたいほどに、彼女は全身に傷を負っている。
蘭さんの話だと、服で隠れているところも、他とあまり変わらないらしい。
たしかに、初めて彼女を見つけた時、彼女の服は刃物で切られたかのようにズタズタにされていたのを思い出す。殴られ、蹴られ、さらには刃物で傷をつけられるなんて、普通では考えられないことだ。
しかし、その“普通”ではないことが彼女の身に起こっているのも現実だ。
幸い、自分に対しての警戒心はあまりなく、おとなしくしていてくれるところを見ると正直に安堵もする。
彼女を自宅に招くという強行に出たはいいが、警戒されて仕舞えばそれも叶わないことであった。
しかし、蘭さんのところに泊まることを頑なに拒絶していたから、あんなことを言ったのだが……。
他ごとを考えながらも、手を止めず、彼女の傷にできるだけ痛みを与えないように丁寧に拭っていく。
頭上から、彼女のほっとした息を聞いて、これくらいでいいだろうと思い、作業を止めた。
次にしなければならないのは、傷の手当てだ。
黙々と作業をしていると、今まで自分に向けられていた視線が外れたのを感じる。
ちらと、盗み見て見ると、窓の外を見つめている。
『綺麗な空……』
小さくて声が聞こえなかった。だから、言葉をかけたのだ。
安「Aさん？どうかしましたか？」
すると、こちらの声に反応して、彼女の視線が自分に向く。
『空がすごく綺麗だから……、思わず、見惚れていました……』
彼女の言葉通り、窓の外を見れば晴れ渡る青空だった。
安「ああ、そうですね。雲ひとつない、素晴らしいほどの快晴です」
『安室さんの瞳と同じですね』
安「え？」
突然のその言葉に、思わず間抜けな声が出てしまった。思わず、目の前にいるAさんを見上げて見つめていると、彼女は、ふわりと、花がほころぶかのような笑顔を突然向けてくる。
『すごく、好きです』
安「……っ！？」
破壊的なほどの笑顔とその言葉に、心臓がどくんっ、と驚くほどに跳ねた。
『すごく綺麗で……透明感があって……見てて、安心できますよね。雲ひとつない快晴って、すごく好きです』
そこまで聞いて、はっとした。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
