優しさをください。9 ページ11
安「眠れるときに眠ったほうがいいですよ。そばにいますから」
優しい声音が、全身を包む。耳朶に響くその優しい声に、身を任せてしまいたくなる。
そのときに、ハッとして私は痛む腕を持ち上げて安室さんの手を握る。
それに驚いたのか、安室さんの口から、「え？」という少しだけ気の抜けたような声が発せられたのだけれど、それは気にしない。
『あ、あの……』
安「どうか、しましたか？」
『名前、Aです』
安「え？」
『なんか、見ていた夢で、知らない男の人にそう呼ばれていました。多分、それが私の名前です』
安「Aさん、ですか…。いいお名前ですね」
そう言われて、安心した。名前もわからない私に対してこんなにも優しくしてくれた人を、失いたくなくて。
私はそれを最後に意識を再び闇に沈めた。
安「おやすみなさい、Aさん……」
意識が落ちる狭間で、そんな優しい声を聞いた。
* *
もぞりとかすかに体を動かそうとすると、全身に痛みが走る。
『う…っ、』
痛みにかすかに呻いて、ゆっくりと瞼を上げれば、私の瞳に映ったのは、黒。
どうして黒が私の視界に映るんだろう、と思いつつ、体を叱咤して起こそうとしたときに気づく。
体が何かに包まれている。
『(…………？)』
わけがわからなくて、ちゃんと頭を覚醒させようと、意識を目の前の黒に集中させる。
すると、それがかすかに動いていることを自覚した。
『(動いてる…？)』
なんで。
という疑問を持ち、私は必死に首を上に向ける。
と。
『――――――っ！！』
整った顔が目の前にあって流石に驚いた。いや、悲鳴をあげなかった私はすごいと思います。というか、この状況は一体なんなのだろうか。
と、よくよく自分を冷静になって見てみると、私はどうやら安室さんの手を握ったまま離さなかったらしいということがわかった。
私の左手は、しっかりと安室さんの右手を握っている。
……なにこの状況。猛烈に恥ずかしいんだけど。
と、そんなことをしている場合ではない。今は何時頃なんだろう。なんとか安室さんの体で遮られている寝室の窓を見てみると、どうやらお昼らしく、外は明るい。…まあ、起きるの早かったわけだし、ギリギリセーフだと思おう。
しかし、私に付き合わせてしまった安室さんを起こしていいのかわからない上に、この状況では私は起き上がることもできない。
どうしたものかと考えていると、相手がふと覚醒した気配を見せた。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
