優しさをください。11 ページ13
リビングの方からかちゃん、というかすかな音がかすかに聞こえてくる。
本気で食べるものを作っているらしいその様子に、私は困惑するしかできない。
無理に体を起こしてもいいけれど、それでまた安室さんに迷惑をかけるわけにもいかない。それに、気づかなかったけれど、巻いてある包帯にかすかに血が滲んでいるところも見受けられる。
……これ以上、無理に動くと、危ない気がするので、やめておこう。
『(…綺麗に、してるな……)』
モノクロで統一された寝室をぼうっと眺める。他にすることがないのだからその行動をとるには必然的なことなんだけれども。
それでも、なんだか、この空間はホッとする。
蘭さんが貸してくれたルームウェアをじっと見つめながら、私は唐突なことを思った。
『(……すごく、お風呂に入りたい……)』
多分、怪我の治療をする前に、蘭さんもタオルとかで拭いてくれたんだろうけれど、ここまで怪我がたくさんあると、そんなにも拭うこともできなかったはず。まして、私はその時意識を失っていたのだから、痛みを与えないように拭ってくれたんだと思う。
というか、私もその立場ならそうやって気を使う。
『(……気持ち、悪い……)』
唐突に思い出された感覚。
私の手を掴んで、押さえつけようとした男。
恐怖が体を縛る。
私は無意識に体を思い切り起こし、そして、痛みに悲鳴をあげる体を無視して寝室から飛び出した。
安「！？どうし……！」
『……っ！！』
何を言ったららいいのかわからなくて、混乱したまま、私はリビングを見回す。そして玄関を見つけた瞬間に、痛みを訴える体を無視して、走り出す。
早く、この感覚を忘れたい一心で。早く、ここから出ていかなければという恐喝にも似た思いを抱えて。必死に手を伸ばした。
しかし。
安「Aさん！！」
後ろから私の名前を呼ばれて、ハッとする。気づけば、安室さんが私の体を優しく包み込んで、私の体を拘束した。
安「どうされたんですか、突然……」
『…はっ…、はっ、っ』
安「落ち着いて、深呼吸してください、大丈夫ですよ」
耳に忍び込んでくる、優しい声に、激しく運動をしてた心臓が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
安「落ち着きましたか？」
『すみま、せん……、大丈夫、ですから……』
とてもではないが、私だったらこんな言葉を信じてあげられない。あれほどに混乱した姿を見れば、無理もないと思う。
安室さんが心配そうに私に声をかけてくれた。
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妃沙(プロフ) - 明里香さん» 誤字のご指摘ありがとうございます！修正しました！ (2018年6月2日 20時) (
レス) id: 8817d67e5d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 安室sideに誤字がありました。「毒の車」ではなく、「僕の車」です。 (2018年6月2日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
妃沙(プロフ) - コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！更新頑張ります！！ (2018年5月27日 8時) (レス) id: 35e497a401 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 凄く面白いです！！、更新頑張ってください！応援しています！！！ (2018年5月26日 23時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃沙 | 作成日時：2018年5月18日 8時
