そして貴方は嘲笑うのでしょう 。 ページ30
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Aが、最初のようにマフィアのような、自分を《道具》として扱おうとする組織を憎む感情がどんどん薄れて行くのは分かっていた。
上司である中原にも、心を許してきている。きっと、自分が一緒に二人で帰らすように仕向けた事も、それに大きく関わってくるだろう。
____自分の価値を認め、前を向こうと。
生きようとしなければ、彼女は___
「答えは出ない、か……少し残念だよ、太宰君。君はとても優秀だったと云うのに…。
今、ポートマフィアは更なる脅威に晒されている。これ以上懸念材料を増やしたくはないのだけれどね。」
そう云って、森は軽くため息を吐く。
まるで、出来の悪い生徒に呆れる教師かのようだ。
太宰には、森の云う“脅威”に心当たりがあった。
「____安吾が失踪した事ですか。」
その言葉に、警備の黒服が息を呑んだ。
「安吾の頭の中には、マフィアの重要機密がごまんと入っている。捕まえて拷問でもさせれば、マフィアを潰す事だって可能だ。
____そんな安吾の捜索を、何故織田作に任せたのですか。」
「流石だねぇ太宰君。この事は極秘事項だったと云うのに。」
「私にだけ、でしょう?」
森は何も云わずに、ただ笑みを濃くする。
太宰は、無表情のまま森に言葉を紡ぐ。
「首領。貴方は、今何かを企んでいる。それは私が全身全霊で取り組んでも、紙切れのように一部しか知る事は出来ないものだ。
……Aについても、此の儘放っておく訳ではないのでしょう?」
「矢張り君は頭がよく切れる。
その通り、島崎君にはしっかりと役に立ってもらわなければならない。」
ーーー島崎君の望まない、【異能】を使った大仕事だ。
声のトーンを低くした森の言葉は、空気を圧した。
大仕事、それはきっと敵勢力の殲滅などと云った小さなものではないだろう。それは確実に、Aを追い詰めかねないようなもの。
森は、Aの心情を良く知っている。知った上で、敢えてAを壊しかねん所まで追い詰めるのだ。
本当に、悪魔のような人だ。合理主義の権化。その言葉がよく似合う。
「……話は以上だよ、太宰君。戻って良い。」
「失礼します。」
森の言葉を聞き、太宰はくるりと踵を返す。
黒服の警備が、太宰の氷よりも冷たいその表情を見て、軽く身じろいだ。
「ーーー嗚呼、首領。」
扉の前で止まり、太宰は思い出したように口を開いた。
「彼女に利益があるかは、彼女自身が答えを出してくれるでしょう。」
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y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時