その手を伸ばし、踏みにじる 。 ページ29
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「____全く、如何してこうなったのか…私にもてんで理解出来ないよ……。」
「……首領。此れは彼女にとって良い傾向にあります、」
「けれどそれは私の最適解ではないのだよ、太宰君。」
幾分かぴりり、とした雰囲気の中繰り広げられる会話は、まるで刃の上を命綱無しで歩いているかのような緊張感があった。
警備の男が、その圧に僅かに身じろぐ。
森と太宰。真っ向から見つめ合う二人に、普段の雰囲気は微塵も感じられはしなかった。
ーーー現在、彼等二人が話しているのは、“島崎 A”の事。
「最初に彼女を“拾ってきた”時は、《道具》として実に使えると思ったんだがね…無感情に、ただ命令された物を破壊する、最恐の異能力者になり得ると。
その為に、常に我々マフィアが彼女の異能の脅威を懸念しなければならないと云うリスクを負う事にはなったけれど……それでも、利益の方が多いにあった。」
“拾う” “道具” 。
彼女が一番嫌う言葉を、何の気もなしに紡ぐ森に、太宰は僅かに顔をしかめた。誰も気付かぬ程に。
今回、太宰が呼ばれた原因は最近のAについてだった。
中原に手袋を貰った日からが、急にだった。
異能を使わないで、仕事をする頻度が急激に増えたのだ。普段ならば、異能で素早く終わらせたものを。
異能を使わない所為か、仕事の速度は遅くなり、今までAの異能のお陰で何の損害もなかった構成員の死亡率が徐々に上がってきている。
それを憂いた森が、太宰を呼び出したのだ。
「太宰君。君が彼女を拾ったのは、彼女の異能に我々のメリットを見出したから、だろう?
____今の彼女は、君の目から見てどう見える?」
「……お言葉ですが、首領。
Aと接して、彼女が想像以上に脆い人間だと云う事を理解しました。冷酷無比を装ってはいますが、心の奥底では、人を殺す事を拒否しています。
このまま行けば、その矛盾に押し潰されて壊れてしまうでしょう。そうなれば、組織としての損害も大きい筈では?」
静かに、淡々と云った太宰を見て、森は目を細める。
「…確かにその通りだ。
では、簡潔に問おうか。」
ーーー彼女から異能を取ったら、マフィアの利益になり得るモノは残っているかい?
「太宰君、自分の考えは貫き通すべきだ。
何を云うか、君自身が彼女の“異能”を見出して拾ったのだから。」
揺らめくランプの灯りの向こうで、森が喉の奥で笑った。
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そして貴方は嘲笑うのでしょう 。→←迷い子の、手を引いて 。
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y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時