気付いてしまったのは、不幸か幸いか 。 ページ22
.
「ーーー君にしてはらしくもない
後ろからかかった声は、酷く愉快気で今のAを見て嘲笑っているようにも感じられて。
「…何か用ですか、太宰さん」と、不機嫌さ丸出しの声で、当人の名を呼んだ。
「…いやね、私と最初に会った時とまるで別人のようだと思ってねえ、相変わらず部下や私要らずの仕事の手際の良さは賞賛に値するけれど……」
ーーー今日の君、異能を“使おうとしなかった”
『……』
今までは、Aの監視の為に、と中原などの上級異能者が仕事に着いてきていたが、今回は違った。
太宰が担当する仕事の、敵勢力が予想以上の数だったらしくAが動員されたのだ。
此処が戦場だったと感じさせぬ程の、相変わらずの笑みに軽く吐き気がして。
顔を歪めさせたAの頭に包帯で巻かれた手を置き、くすりと笑みを零した。
「矢張り、君は見ていて飽きない。」
ーーー自分の感情が、他人によって如何様にも変えられてしまう。それを君自身は気付かない。
『…っ、』
耳元で低い声で囁いた太宰の手を払う。
払ったのは左手だったが、当然の如く無効化された自身の異能は、この目の前の男に対しては無力なのだと痛感させられた。
嗚呼、気に食わない。最初に会った時から、何もかもこの男の手の平で踊らされているようで。
全てを見透かしているような太宰の瞳が、嫌いだ。
『______分かってますよ。自分の気持ちなんだから、自分が一番分かってる。』
中原さんから云われた、私は《道具》なんかではない事を。
織田作さんから云われた言葉に、自分の本心を理解する事が出来た。
_______私は、本当は、
「……ではそんな君に、ある人からの
『は、ある人?』
「A、」
顔を上げて、太宰を見上げると、厭に真剣な顔でAを見下ろしていた。
「 “自分で選んだ道を進め、そこに決して後悔はない。”
ポートマフィアは、君の居場所で君は此処でどんな道を選ぶのか。それは全て君次第であるし、右も左も分からぬ赤子じゃあない。
中也からも云われただろうけど、君は“一人の人間”だ。変な意地を張らずに、素直に自分の気持ちを認めるんだ。
_____でなければ、きっといつか君は壊れてしまうだろう。」
その言葉には、真実味があって。
何故だかすとん、と自分の胸に素直に落ちたのだ。
.
2069人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時