ねえ、貴方は気付いていますか 。 ページ17
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ぐ、っと手袋がはめられた左手を握る。開く。握る。
『…中原さん、此方に来てくれませんか。』
「あ?…あぁ。」
いつもよりも幾分か静かな口調で。先程の涙は目の錯覚だったのだろうかとつい思ってしまう程、Aは漣一つたたない水のように静かに云った。
中原は少し怪訝そうな顔をしたが、いつもと様子の違うAを見て、云われた通りに俯くAの側へと向かう。
そして、何だ、と尋ねる前に中原の瞳は大きく見開かれたのだった。
「な…、」
『……っ本当に、っ』
突如中原の頬に感じた革の感触。温度のないそれは、紛れもなく中原がAに与えた手袋で。
顔を上げたAの顔は、
『初めて、なんですよ、っこんな風に人に触れたの、っ、』
涙も笑顔も全てがごちゃ混ぜになって。
くしゃくしゃな笑顔を浮かべていた。ただ無感情に人を壊し続ける、無情な彼女の面影は何処にも無かった。
そこにいたのは、【自分の左手が人を壊さない】と云う事実を実感して、素直に喜び、泣く一人の少女だった。
そんなAの表情に、中原じゃ見開いていた目を閉じて、そっと自身の頬に当てられているAの左手に触れる。
そして、空いた片方の手をAの頭の上へと乗せ、くしゃりと撫でた。
「知ってる。」
『…太宰さん以来です、』
「嗚呼。」
『自分からは触れたい、なんて思わなかったから、』
「____嗚呼。」
ーーー中原は思った。
確かに彼女は脆い。異能は強力でも、心は硝子のように繊細なのだ、本当は。
周りの大人達はそれを見て見ぬ振りをして、彼女に異能を使わせ続けた。彼女の意思など、心の奥底に沈めさせ、無理矢理“人の生命など無価値”だと思い込もうとするまで追い詰め。
しかし世界が理不尽なのは、中原も太宰も___ポートマフィアにいる人間はみな知っている。理解している。
だからこそ云わせてもらう。
「ーーー太宰。手前は、本当にとんでもない拾い物をしたぜ。」
彼女ほど、“人殺し”が似合わない人間は、
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y(プロフ) - まだ、見てます。こんなに端麗な日本語で綴られた物語を書ける方、中々いないです。最高の作品です。どうか、いつか続きが読めることを願っています (2月26日 19時) (レス) @page38 id: 02477a501f (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - 何周も見てるけどやっぱ飽きないし面白いです!!更新待ってます!!!!!() (2022年11月15日 14時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
おみず - お、おわり……??続きがまた見たいです……この先でも活躍するんだろう夢主ちゃん見たいです……!!! (2022年11月10日 23時) (レス) @page38 id: 0c3a3b3097 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫ニサナ - 更新待ってます!! (2022年3月14日 22時) (レス) @page38 id: 1c42f0d3fc (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - え、待ってめっちゃ好き。続き気になる…!更新待ってます、頑張ってください!! (2022年2月1日 17時) (レス) @page38 id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪原 ゆずき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時:2016年8月4日 13時