【文豪】 参謀と、黒の時代。《第２章》 【ストレイドッグス】

牢の中と外で 。 ページ3

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『____本当此処ってブラック企業だと思わない？おにーさん。』

「おんおん、わかるでその気持ち。
ボクもそんな此処が嫌で裏切ったのも理由の一つにあるからなぁ。」

『あ、そうなの？じゃあ太宰さんに云っとくね。』

「一寸待ってくれへん？何、キミもボクに尋問しに来たん？」


中原と太宰の会話など露知らず。
Aは折口のいる牢屋前で、体育座りをして折口と会話をしていた。

仕事帰りだったのだろう、Aのシャツには所々血が付いている。


ーーー折口とAがこうして会話をしだすようになったのは、つい一週間くらい前からだ。

任務が終わったら、報告だけを終えてふらりと折口のいる牢へ向かい、其処でたわいもない雑談をする。
きっかけは何だったか、よくわからないがこのポートマフィアの中でくだらない世間話をするのは、少しだけ心が落ち着いた気がした。



「Aちゃん、何かキミ変わったな。」

『......は？』


いつものようににこりと笑みを浮かべて、折口は海を彷彿とさせるような青い瞳でAを見つめる。

一瞬、きょとんとするがその後すぐに「あぁ...」と納得したように声を漏らした。


『良く言われる。中原さんにも、太宰さんにも。
___最初より感情表現が豊かになったって。』

「せやな。太宰クンも云ってたけど、最初は出会った人間皆殺しにしそうな程殺意に溢れた狼みたいだったって。

うん、今のAちゃんは子兎レベルには落ち着いとる。」

『それ褒めてるのか貶してるのかどっち？』


「勿論、褒めとるよ」と肩をすくめて笑う折口だが、非常に胡散臭い。
ここ最近会話を続けて一つ分かったことがある。
彼は、太宰以上に嘘吐きだと。

折口は、身をやや前へ乗り出してAに尋ねた。


「自分で自覚しとる部分だけでええんやけど.....変わった理由とかってあるん？」

『変わった理由.......』


今までの自分が世間的には受け入れられないくらい危険人物なのは分かっていた。それは今でも変わらないが。

と云っても、自分自身ではそれしか道がなかったのだから、命ぜられたままに壊そう、と考えた訳で。悪いなどとは微塵にも感じていない。


けれど。



『_____此処が、と云うより中原さんに貰った言葉、だと思う。』





ーーーあの人だけは、私を《道具》ではなく、一人の《人間》として見てくれたから。




『中原さんにもらった蜂蜜飴、美味しかった。』



そう云って、少しだけ笑みを浮かべた。



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