君だから

ラナンキュラスと君と ページ7

「これ、ふっかに似てる」


そう言って照が紫の花を買ってきた。

「え？どこが？紫だから？」

「花がでかいの！」


「…」

満面の笑顔で俺の鼻先に突きつけるその花は
ラナンキュラスというらしい。

幾重にもなった花びらは光に透けて、１枚１枚は繊細で、重なりあうことでひとつの存在感を成していた。


「まぁ。この美しさがね、同じと言えば同じだわ。」

顔がデカイいじりはプライベートではいいっつーの、と思いながら、紫の花を受け取る。

「でもどーしよ、花瓶なんてないしなぁ」

部屋をキョロキョロしてみるが、ペットボトルくらい。

とりあえず差してみたが、本当に花がでかくて不安定になり倒れてしまった。

「うわ！水こぼれた！安定性ないな！」

勢いよく倒れたペットボトルの水は俺のTシャツを濡らし、テーブルを濡らし、そのまま床に滴り落ちる。

あわてて水を拭く俺を見てケラケラと楽しそうに笑う照。


「考えて買えよ、花瓶なんかねぇよ」

口を尖らせて抗議する。

照は、机に倒れたラナンキュラスを拾うと、

「一本じゃ安定性なかったかぁ」

と、花下15センチほどにカットして、ガラスのコップへ放り込んだ。

「よし、さすが、顔デカイ同士、ふっかの足の長さ参考に茎切ったらビンゴ」


「でかくねーわ、ってかそんな足短くねーわ」

思わず突っ込む。




ふふ、と笑って俺の腰を引き寄せる。

「大丈夫、ふっかの顔が重くて倒れそうなときは俺が支えてあげる。」


ぎゅうっと抱き締めて首筋にキスをする。


「こんな筋肉でできた花なんか、ねーよ」

「ここにあるじゃん」

チュッと首筋にキスをする音と感触がくすぐったくて、腕に力を入れて体を離そうとするがビクともしない。


「花っていうより、照は支柱だな…」

「うまい！」

クフフとまた肩を揺らして笑いながら

「Tシャツ濡れてる。脱がしていい？」


聞くなよ…


「ダメ…って言ってもムダだって知ってる…」


「さすが」


照の手のひらが腰の辺りから滑り込んでくる。


「…！」

熱を帯びた照の指先に思わず反応してしまう。


「ふっか、かわいい」

「そういうこと、言うなよ…」


かわいいわけない。そんなこと分かってる。


「かわいい。色素の薄い瞳も、髪も、肌も。全部好き」


「やめ…」


言いかけて唇を塞がれる。




「体、預けてよ、俺、ふっかの支柱だし」

言いながら照の唇が首筋から下へやさしく這う。

こうなると。

ほら。


もう抵抗できないんだ。

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