君だから

君のため ページ46

しまった切りすぎた。

初めて行った美容院、くせ毛だから気を付けてた前髪。はぁ。寝ちゃった俺が悪いな。

今日は誰にも会いたくない。

ブブって携帯が鳴る。

【どこ？仕事終わった】

「照…」

仕事早く終わったら連絡するって言ってた。
俺が今日オフなの知ってるし、断る理由が思い付かない。

あー。前髪…





「ういーっす」

サングラスしたままそそくさと、ドアを開けてるくれた照の横を通りすぎる。

「ふっか、サングラスつけたままだけど？」


ソファに体育座りをして出来るだけ顔を隠しながら、

「あー、うん」

曖昧な返事。

「あれ？髪切った」

「まぁ少し」

「髪色、また黒くしたの」

「あー、ドラマ…」

「お、決まった？やったじゃん！」

「んー…」

「ふっか、どした？調子悪い？」



照が隣に座ったと思ったら、パッとサングラスを外された。

「わぁ！」

「なんだよ、そーゆーことか」

思わず前髪を手で覆うけど。

「めっちゃ切ったな…」

ワハって笑った。

「…へん？」

「まぁ、短いのもいいんじゃない？」


「いや、変だよな…、はー、明日行きたくねぇ…」



丸めた背中を照が優しく撫でてくれる。

「いーじゃん、可愛いよ？それにすぐ伸びるって。大したことじゃないじゃん」

「無責任なこと、言うなよ…」

俺には重大事件だ。

「オンザ眉毛って逆に新しいし」

キャハハって笑う照を横目で睨む。

くそ。他人事だと思って。俺のビジュアルにおける前髪の重要性をわかってないんだ。

「帰る！」

「え？」

「帰ってワカメ食べる！」

海藻食べると髪伸びるって聞いたことある！

「違うって、髪が強くなるやつそれ」

って、また笑い転げる。

「マジで帰る！対策考える！」



リビングのドア、開けた瞬間。

照の腕が俺の肩越しにドアを閉める。

「なんだよっ！」

振り向くと鼻先に照の唇。

「デコ、出てるのかわいいって」

「じゃあ、笑うなよ」

「それはムリ」

「じゃあやっぱり帰る！」

照を突き飛ばそうとしたけど。


無理だよね…


「こんなかわいい前髪にして、帰れると思った？」

照の目線から、逸らせられない。

「帰さないよ」

ドアにもたれたまま、深いキス。

吐息が耳元で囁く。

「ねぇ、早く伸びる方法、ひとつあった」




そーゆーことしたら。

早く伸びるって、知ってる？

ふふって笑う。


そんなわけないだろ…

照を睨む。

ニコニコしやがって。






まぁ、でも、何でも、試してみるのも。

照となら

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