君だから

不可視の気持ちは iw eyes ページ35

「少し痩せた」

珍しく俺の背中にもたれかかって自己申告。

「うん、知ってた。三キロくらい減ってるでしょ、分かるよ」

「最近ハードすぎる」

ズルズルと、そのまま仰向けに床に転がった。

「疲れた？」

ふっかの顔を覗き込む。

「うん…」


珍しく弱気。


「大丈夫？」


閉じていた目が開いて、色素の薄い瞳に俺が映る。


「照、疲れてない？」


「俺が？大丈夫だよ？」


「今じゃなくて」


「疲れてないよ」


少し笑うと安心したようにふっかも笑う。

「なら、良かった」


伸ばした手が俺の頬に触れて。


「昨日すげー現場ではしゃいでた気がして。逆に疲れてんのかなって」


「全員で仕事、久しぶりだったからマジで楽しかっただけ。心配しすぎ」


ふっかの頬を軽くつねる。


「はしゃぎすぎてた？」

眉間にシワを寄せてアヒル口で拗ねてみる。


「違う違う、俺、深読みし過ぎたな」

きれいな指が俺の眉間をなぞる。

その手を掴んで引き寄せる。


「ふっか」


「なんだよ、ごめんって」

「俺は今ちょっと感動」

「え？」

「俺も同じこと考えてる」


「いつも。大丈夫かなって。無理しないでくれよって」


華奢な肩、細い腕。

力を込めたら折れてしまいそう。

「マジで、ふっかに何かあったら俺が先にどうにかなるから」

「大げさ」


「大げさじゃない」

Tシャツをめくって、白い肩にキスをする。


「ほっそ…」

呟くと。


「鍛えても本当に筋肉つかないんだよな…全然照みたいにならない」

照れ隠しか、白くて細い腕で、力こぶをつくってみせるけど。


「そりゃあ…」

言いかけて。ハッと手で口を覆う。


「なに？そりゃあって。」

やべ。

筋肉が大きくならないように筋トレ教えてるって。

言ったら怒るかな。

「今言おうとしたこと。なんか大事なことな気がするぞ」


「いや。何でもない」


目をそらす。


「ぜったいなんか隠してる！」

詰めよってくる上目遣いがかわいいけど。


「隠してないって。いいじゃん、ふっかは細いのが似合ってるよ」


「やだ！俺もガッチリしたい！」



えー。俺の、ふっかの理想の体型はこのまんまなんだよなぁ。

「ふっかは筋肉つきにくいんだよ」


「そうかぁ」

残念そうにしゅんとする姿が申し訳なくもあり可愛くもあり。

「少しずつ、また筋トレしような」

この体型、キープでね。

細い腰を抱き寄せる。

ごめんね。

心の中で謝って。

納得してない顔だけど。

かわいい嘘と、許してもらおう。

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