君だから

美味しい時間3 absk version ページ34

目が覚めたら今日も雨。

「よく降るなぁ」

7月だけど、ずっと続く雨のせいで肌寒い。

人肌の布団が気持ち良すぎて、また鼻下までかぶる。

今日はオフだから、もう少し寝よう。

そう思いながら、目を閉じると

ヒヤッとした感触が突然背中に。

ビックリし過ぎて起き上がろうとしたら、
ドサッと俺の上に何かが覆い被さった。

「…っ」

でっかいゴールデンレトリーバー！

じゃなかった佐久間！

「おっはよーー！阿部ちゃん」

朝からマックステンションで、頭、顔、首、いろんなところにチュッチュッチュッチュッ…


押し退けようとしたけど膝の上に体重乗せられて身動きできない。

「さ、佐久間！ちょっと！わかったから！」

抵抗するけど全然聞こえてないみたいにキスの雨が止まらない。

体をひねって、うつ伏せになって、ほふく前進で逃れようとしたけど、逆に腰を捕まれて今度は背中にキスの雨。

「佐久間ってば！」

後ろからぎゅうーって抱き締められて、ようやく動きが止まった。

「おはよ」

「朝から元気すぎ」

「だって阿部ちゃんが俺のベッドにいるんだよ？アガるでしょ！」


「…」


「朝ごはんできてるよ、それとも俺に食べられ…」


言いかけたところでガバッと起きあがる。


「わぁ！ビックリした！」


「起きる！」


「朝から暑苦しーし！」


「ひどーい！可愛くない！昨日はあんなにアンアン言ってかわいいの極みだっ…いて！」


顔にクッションを投げつけた。

本当に恥ずかしすぎるし！

「思ったことすぐ口に出すのやめろよ！」


「ごめん…」

シュンとしてる。

でも知らない！


もうさっさと着替えよう。


俺の服。

この辺に…


あれ？


見当たらない。


「洗っちゃった！」


背中にぎゅっと張り付いて。


肩越しに上目遣いで満面の笑み。

「俺の服貸したげるからさ。まず朝ごはん、食べよ？」


そういえば。
お腹すいた。


「うん、食べたい。お腹すいた」


にこーって笑うピンク色の唇が美味しそうに見えたんだ。きっと。


気付いたらキスしてた。


驚いた佐久間の顔が。

ちょっとツボ。

「なにその顔！」

アハって笑って、たまには俺からねって。

固まった表情。

「佐久間？驚いた？」


顔をのぞきこむと。


突然唇に噛みつくようなキス。


そのまま押される形でまたベッドへ倒れこむ。


「デレ、出した阿部ちゃんが悪い」


あ、スイッチ。

入れちゃったみたい。


美味しい朝ごはんは、もうちょっとおあずけ。

だな。

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