君だから

春の日の ページ4

雨の日は嫌いだ。

髪の毛がふにゃってするし、靴が濡れるし。
三寒四温ていうけど、今日は寒すぎる。
３月なのに最低気温が1℃なんて。
パーカーに何も羽織らなかったことを後悔したのは家を出てしばらくしてから。

集合場所には阿部と舘さん。

「はよー、寒くね？」

「いやふっか、そのカッコじゃ寒いわ。」

ウールのコートの阿部と、ダウン姿の舘さんに憐れみの眼差しを向けられる。


「いや、昨日の今日よ？昨日春だったよね？」

「天気予報見てないの？今日は西高東低の典型的な冬の気圧配置で、低気圧が…」

「いや、説明はいいや。寒い日は前日に教えてくれ！」

マジで震えながら阿部の本日のお天気説明を遮って、舘さんにくっつく。
見かねた舘さんはマフラーを貸してくれた。
紳士…いや、貴族…





３人のロケが終了し、再び私服に着替えた。
衣装はツナギだったから、あれはあれで寒かった…

「お疲れ様ー、っくしゅ！」
「大丈夫？ふっか、帰ったら直ぐ暖まれよ？」

「気温に合った服装をしなきゃ、大人なんだから、パーカー１枚じゃ風邪引きます、って言ってるようなものじゃん。」

優しい舘さんと、正論のみをぶつけながらも実は本音は心配性の阿部に手を振って。

タクシーに乗り込んで行き先を告げる。

携帯が鳴る。

【着いてるよ】

照がうちに着いたとの連絡。そうだった、今日夜来るって言ってたわ…忘れてた。
鍵は持ってるから入ってるだろう。

【今から…】
思った以上に指先が悴んで、思うように動かない。
簡単にスタンプを送信して携帯を閉じた。

車内の暖かさに眠気がやってくる。

着くまで休もう。

目を閉じると、あっという間に意識が遠のいた。


「着きましたよ…」


ハッと気がつくと、自宅マンションの前。
タクシーを降りて部屋へ向かう。

寝起きのせいか、目の前がぼんやりして足に力が入らない。


部屋にたどり着き、ドアを開けると、案の定照がすでにくつろいでる。

「お疲れー、ロケど…顔色悪いよ？どうした？」

「…風邪、引きに行ってきました…」

「え？なにって？」

「なんか、寒くて…」

「何？どした？」

読みかけの雑誌を放り投げて、駆け寄ってくる。照の暖かい手のひらが、俺の冷えきった額を包む。

温かさにホッとして、照の肩にもたれた。

「あつい…、熱あるだろ…」

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