君だから

Step one 3 ページ26

「俺のこと、嫌い？」


「なわけないし」


「良かった」


ぎゅっと背中に回った手に力がこもる
。


「照、いたい…」


「ごめん」





体が少し離れて、照の手が今度は俺の頬に触れて。

目があう。


ヤバい。この流れ。





「また、聞くけど。キスしていい？」


うん、って言えない、でも、照から視線が逸らせない。


応える代わりにぎゅっと目をつむる。

暖かい照の吐息を唇に感じた。






触れるか触れないか。

そんな程度のキス。



思わず

「終わり？」と聞いてしまった。

「終わんなくていいの？」

真剣な目で俺をみるから。


「いや！終わり終わり！」


ふっと笑う。

「やっぱり押しに弱いねふっか」




「は？」

「ふっかは押しに弱い」

両手を俺の肩に置いて笑う。


「なにそれ、流された訳じゃないし！ちゃんと、」

「ちゃんと？」

「考えて…」


「でもまとまらなくて？」


「う…まぁ、そう。まとまらなくて…」


「照のこと大好きなのに素直になれなくて」


「…勝手なアテレコすんな」


キャハハっと、いつもみたいに笑う照。

重たく感じてた心のなかの何かがフッと消える。

笑っていてほしい、

そんなことに今更気づく。






「もう、隠れないでよね、地味に傷付くから」

バレてた…


だっさ…


「ごめん、でも何で分かったの？」

「ふっかの鞄、机のうえに置いてあった」



「あー、詰めが甘かったか」

「詰めが甘くて押しに弱いのがふっか」


「ちげーし！阿部は気づかなかったし！」


「頭いいけど詰めが甘いのが阿部」








「まぁ、俺は、ふっかがどこにいるかだいたい分かるから、隠れてもムダ」

「なんでわかんの？」

「匂い」

「匂い！？なにそれ！犬かよ！」


「ウソウソ、…ってこともないかな。なんだろ、気配っていうか」


「こわっ！照こわっ！」

「怖くない怖くない」


照は笑うけど。


あながち、嘘でもなさそう。

勘ってこと？



「どっちにしろ動物…」

「なんか言った？」

「なんも」

並んで歩き出す。

うん、やっぱり、照の横顔見るのが１番しっくりくる。

この、くすぐったいような気持ちはきっと、慣れていくんだろう。






「さっきは、あんなこと言ったけど。」

「あんなこと？」





「友達に戻る気なんてないから」

まっすぐ俺をみて。





「今度はもっとちゃんとキスさせてね」

しれっと言う照。






…やっぱり、まだまだ慣れそうにない。

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