君だから

甘い朝 ページ1

携帯のアラームが鳴る。

オフの日の朝7:00。

「ん…」

どこでなってる？

布団から手だけを出して探してみるが、見当たらない。

ピロピロと、大きすぎず、かといって無視もできない電子音が止むことなく、鳴り続ける。

寝起きの働かない頭の中で、なんとなくボンヤリ思い出したのは、この音は俺の携帯の音じゃないってこと。


「あれ…？」

布団から顔を出す。上半身を起こそうとして気づく、自分の体が動かない。

重たい、筋肉質の腕が、自分の腰に巻き付いて離れない。

「お？おぉ…？」

見慣れた寝顔は、幸せそうに寝息を立てて、その両腕は俺の腰の辺りをガッチリホールドしている。

「ひかる…重たい…」

何とかその腕を外し、ベッドから這い出た。

床に落ちていた携帯のアラームを止めて、照を確認したが、まだ深い眠りの中にいるようだった。

俺ももう一度寝ようか、ボンヤリとカーテンの端から漏れる光の筋を見ながら顔をあげたとき、再び携帯が鳴る。

今度は俺の携帯だ。

康二からのメッセージ。

【おはようございます！今日オフですよね？昼メシ、行きませんか？】

何か相談かな？

昼メシか…

予定もないし、行くか。
新しい服、ほしかったし、出掛けようか。

そんなことを考えながら、返信を打ち込もうとしたとき。

ふいに後ろから手が延びて俺の携帯をさらう。

「おはよー」

「照、悪い、起こした？」

「いや、今日は早く起きようって思ってたから。」

そう言いながら俺を後ろから抱き締めて、首筋に顔を埋める。

「くすぐった！」

反射的に体を反らせる俺を抱きすくめて。

「今日は出掛けたくないなー」


「へ？いい天気だよ？」

「昼は俺が作るからさ」


ダメ？と、子犬のように上目遣いで見られると、まぁ、断れないよね。

「まー、ゴロゴロすっか。録りためた録画も観たいしな」

「決まり！」

と、言いながらさっき俺の手から取り上げた携帯をいじる。

「あ、おい、勝手に…」

【今日は照とデートなんで悪い】

と、康二に返信してる。

「おーい、やめろよ！そういうのはさぁ〜、」


ピロン♪


【ズルい！俺も混ぜてください！今からふっかさん迎えに行きます！】


「げ！あいつ！今から来るって！」

「ほらぁー！逆効果！」

こ、な、く、て、いい！

ピロン♪

【８時には着きます！】



「マジか！」


俺の代わりに康二と不毛の応酬をする照を横目に、部屋を出る。

騒がしいオフになりそう。
そんなのもたまにはいいかもな。

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