大西流星短編集4 (ページ49)

今日:17 hit、昨日:1 hit、合計:96,372 hit

2 ページ49

『へへっ、これからもよろしくお願いします』
とぺこりと頭を下げた流星

そして
嬉しそうにそれを見つめる大吾

この光景がこいつらは当たり前で俺にとっては当たり前やない
自分で選んだ道やのにな……
そんなことを考えよると、ふいに流星が俺の方を見た

『永瀬くん？』

ちゃう。俺は

「流星」

久しぶりに本人前にして呼んだ名前

『廉くん』

驚いたような顔をしたかと思えば
少し恥ずかしそうに微笑んで俺の名前を呼んだ
"廉くん"と。

あー、好きやな
この子が大好きでたまらん

そう心が叫んだ。今すぐに抱きしめて俺の俺だけのものにしたい。

きっと時間にしては30秒ないくらいのやりとりやのに
すごく長く感じて
"流星"と呼ぶ大吾の声で現実に引き戻された

『ん？なに？大ちゃん？』

なんともないように答える流星越しに大吾と目が合う
そうきっと、大吾は俺の気持ちを知っとる。
同期やし親友やから。

それでもきっと、流星だけは譲る気ないんやろうな。
目が笑ってへんもん。
わかっとるよ。お前から流星を奪う気なんてない。そもそも流星にこの気持ちを伝える勇気さえ俺にはないねん。

『もぉ、大ちゃんどうしたん？変やで？顔怖いし』

流星は大吾のほっぺをつまんだ
どんな顔をしとるかは後頭部しか見えへん俺にはわからんけど
大吾は愛おしそうに目を細めたのをみて
きっと、いや、絶対かわええんやろうなって思った。

完敗やわ。
明日の仕事は昼からやから、ほんまは泊まろうかなんて考えとったけど、帰ろうか。
きっと流星は大吾の家に泊まるんやろ？
さすがにその事実を本人の口から聞くのはきつい。

駅まで俺を送り届けてくれた4人に手を振って改札を通った
後ろをちらっとみるとなんや楽しそうに話す3人と

俺に向かって手を振る流星
こんなん

携帯を片手に歩く

「もしもし」

『もしもし？忘れ物？』

「うん。流星に言い忘れたことがあってな」

『え？なに？』

「大好きやからさ、俺、流星のこと。やから、絶対大吾と幸せになりや。」

『………………廉くん』

電話越しにぐずっと声がする
きっと、流星には伝わったはず。
俺の"好き"にどんな意味がこもっとるか。

「泣くなや」

『うんっ、ありがとね。』

「またな」

『うん、ばいばい！』

きっと俺はまだこの想いを消すことなんてできひん。
流星が幸せやったらええねん！
そう思える日がいつかくるとええな。

fin